4-10「プリンは伸びない」(2P)
シルクメイル・オリオン領西の端、ウエストエッジ。
『女神のクローゼット』と呼ばれる街の中。
遅い昼飯で賑わう食堂・ポロネーズの一画で
ミリアは一口目の肉に頬を緩ませ『生きている喜び』を噛み締めていた。
『何が食べたい?』とエリックに聞かれ、即。
『鶏。鶏がいい』と迷いなく答えて今である。
わいわい、ガヤガヤと周りの会話も賑やかな中、ゆらゆらと湯気立つクリームシチューを一口頬張りもぐもぐと頬を動かす彼女。
その頬は『美味しい』を絵に描いたように持ち上がっていて、エリックはクスッと笑いを漏らしていた。
「…………君、美味そうに食べるよな。
鶏が好き?」
「だいすき!」
湯気立つポトフもそのままに話しかけるエリックに、返事は間髪入れずに返ってくる。鶏肉とトマトは彼女の大好物だった。
「三度のパンより、鶏が好き。
鶏があれば生きていけるとおもっている!」
そう、堂々と言い放ち
白いシチューを纏った鶏肉を、ニンジンと一緒に頬張る彼女を前に、話題は自然と溢れ出す。
「……そういえば、君に偶然声をかけた時も、鶏を食べていたよな? あの時は串焼きだっけ?」
「ああー、よく覚えてるね?
『ピュ・チーボ』の串焼き、美味しかったでしょ?」
「ああ、うん。美味かった」
「…………よかったねー?
あの時言ってた『食事の約束』果たしたね!
ヤッタネっ」
「…………まあ、ああ、うん。
そうだな?」
小さく『good サイン』などを作りながらも、しっかりもぐもぐする彼女に、少々ぎこちなく頷く彼。
その相槌の下で
『現状』に
『少しの驚きの混じった感慨深さ』が沸き起こり、瞳を巡らせる。
────『あの時思い描いていた”食事”とは、随分と違う状況になった今』に、当てはめられる言葉がない。
あの時は、ただ。
『何度か食事を交わして、好意を持たせてから情報だけを抜けばいい』と思っていた。
しかし、




