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4-10「プリンは伸びない」(1P)










 それは、彼女の工房。

 長年連れ添い、過ごしてきた縫製工房(ドレスショップ)






 ──────ふ…………



 若く騒がしい二人を見送って

 オーナーのベレッタは、感慨深げに息をついた。






 覗き込むのは窓ガラスの向こう。




 前髪を頭の上でまとめ上げた髪型そのまま

 歩いていったミリアと


 ミリアになにやら話しかけている様子の

 『エリック』と名乗った青年に




 自然と口が緩む。

 


(────…………ふふっ)



 見守る視線は穏やかで

 まるで、我が子を見るような気持ちだった。



 

 感慨深い。

 胸の奥に込みあげる、懐かしさ。



 それを瞼の奥に隠して、

 ベレッタは”ふっ”と窓から体を浮かせ店内を行く。



 踏みしめるのは年季の入った床。

 流れ行くのは、いつもの店。



 味わうように眺める彼女の目が客用ソファーに向けられた時。




「…………ん?」


 布張りのソファーの下。

 隙間から飛び出て床に張り付く紙が目に留まり、細く皺のある指を伸ばしていた。




 拾い上げたのは、”薄桃色のカード”。

 あの『ミリアー! 頼むから嫁に行ってくれ!』と怨念の込められた、あのカードである。



(…………アラぁ、ふふ。

 ミリーのお父様かしら)




 それを見て呟きひっくり返し

 文言を見てひと笑い。




(……親の心子知らず、とはよく言ったものねぇ)

 書かれた言葉に頷きながら、

 彼女はすたすたとカウンターに戻ると




 カウンター後ろの、棚の一部。


 ミリアの私物・裁縫や着付けの指南書や

 お手製のカタログが詰まったそこに差し込んだ。









 ”これ”が



 のちに、大きな大きな騒動の火種になることを


 オーナーはもちろん

 手紙の存在を忘れたミリアも、想像してなど居なかった。

















「〜〜〜〜〜〜っ……!

 とり! にく!

 …………さいっこーーーかな……!」



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