1-6「ねえ、脱いで?」(4P)
「そもそもですよ!
魔具自体、貴族の方や王室、あと専属の商人が抱え込んで、一般人には新製品の情報さえ回ってこないしー。
魔具専門店に「新台入荷!」って言われて見に行っても、大体3年以上前の型落ち品。
それでも十数万メイルはするしさ。
……無理むり無理ムリ。
店の経費で落とすって言っても、高すぎて手が出ないよ、あんなの」
「……で、これは?」
「ふふふ。
うちのお客様のアッパークラスの貴族さまがね?
『倉庫から出てきたの〜』ってくれたの。
…………初めて使った時は感動したよね〜、これは便利だ! って。
今まで手縫いだったから本当に!」
「…………そうか」
その話に、エリックは重めの相槌を打っていた。
”想定外”といえば想定外の言葉に、一拍・二拍の間を置いて、シャルメに目を向ける。
彼の知っている中で、この『初期型シャルメ』はもうお目にかかることができない。
彼の中では『骨董品』扱いのそれに、
エリックは、引き寄せられるように、手を伸ばしていた。
「……なあ。もう少し、見てもいいか?
魔具には興味があるんだ」
「…………うん、いいけど……、」
もはや生産していないシャルメに、もう一度。彼が指を伸ばした時。
ミリアの──『少々甘みの混じった声』が、彼を止めた。
思わず動きも止めるような、甘く柔らかい声。
誘惑を帯びたその音色に、エリックが顔を向けた先。
くすくす・にっこりと彼女が微笑う。
「…………その前に」
カウンター越し 前のめり
胸の下で腕を組み じっと見つめるその目つき。
自然と彼の目が”捉える”
服の下から押し上げられた「胸」の膨らみ
彼女の微笑む口元が 誘う
目の前で
すうっと身を引き 胸を張り
細い指先が引き抜くは
彼女の胸元
コルセットベルトのリボン紐
誘う指先 抜ける紐
ふふふっ くすくす
しゅるん しゅるん
「……ねえ、脱いで?」




