4-8「待ってたの」(9P)
「────まあまあ、いいよいいよ!
とりあえず、わたしはコサージュになる予定のシルクを片付けなきゃ〜」
ぐぅ────っと伸びをして、
『切り替え完了~』と言わんばかりに肩を回す彼女に
エリックは、追いかけるように────声をかけた。
「…………ミリア。
……俺が聞くのもなんだけど。
……相当、まずいのか?」
「マジヤバめ。
修羅場。
デスマーチ。
マジでしんどい。
おなかへった」
「……」
「……いやあの、事実言ってごめん……
嘘ついても仕方ないと思って……
でもあの別に、おにーさんを責めてるわけじゃ」
「────ミリー?
どちらさま〜?」
「……!」
突如。
ミリアの声を遮って、
店の奥から響いた声に、二人は小さく動きを止めた。
耳に届くは、上品な女性の声
ミリアは素早く振り返り
エリックは────店の奥。
そろって、カウンター横の扉に目を向けて────
「…………オーナー!」
ミリアの声に呼ばれたように
古ぼけた扉から姿を表したのは
短い銀の髪はボブショート。
かなりの細身で「楚々とした淑女」という言葉がよく似合う
大きな丸いピアスが目立つ、初老の女性。
ミリアにオーナーと呼ばれたその彼女は『ふふ』っと微笑んだ。
「…………アラ。こんにちは」
#エルミリ




