4-8「待ってたの」(6P)
「それでもって、おにーさん来ないしさ? まあ『舞踏会開く』っていうなら、お仕えのキミも忙しくて来れないのは当たり前なんだけど」
計画した本人にねぎらいを送る。
「大変だったよねー? 今回、一般からも参加OKとか、聞いた? みんな気合い入りまくり。お料理もいくつ用意するんだか。…………おにーさんも苦労するよねぇ〜?」
「…………」
ぽんぽん。うんうん。
わかるわかる。一緒一緒。
ぺしぺしっ。たしたしっ。
(…………えーと…………)
「…………はあ、苦労するよネ、お互いネ。下のもん同士、なかよくしよーネ。」
「………………」
────────『気まずい』。
『完全に仲間』の立場からねぎらいを送るミリアの瞳を見つめられない。
すぅ──っと口の端から気まずさを逃がすぐらいには気まずい。
──────言えない。
予定を組んだのは自分自身である、と。
『調査に注力したい』と『面倒なことは早めに済ませてしまいたい』『というかここしか空いてない』で、無理やりねじ込んだと。
『君が大変な思いをしているのは、俺のせいなんだ』と。
…………言えない。
彼は言えなかった。
ああ、居たたまれない。
ミリアの気持ちが逆に痛い。
責めているわけではないのに大激痛である。
「……………………」
黙り込んで言葉も出ない盟主さまの前。
『さーて、愚痴も言ったし仕事するかー!』と伸びをする彼女に、彼の・重い・口が・開いた。




