4-8「待ってたの」(3P)
──さあ、今日は何を話そうか。
リチャードにもらった『マジェラのカード』のことを聞いてみようか。
それとも、作戦会議をしようか。
するのなら、どう運んでいこうか。
それらを考えて、少しばかり、心が浮き立つ。
──しかし、流れるように
今度は悩ましげに視線を落とし、
(……ミリアはいいとして、次はオーナーだな。
彼女について回るにしろ
店の手伝いをするにしろ
オーナーにはきちんと挨拶をしたい)
そう、考えを巡らせつつ
彼の足は、ビスティーの前に差し掛かり────
(────”closed”……? 店にいるのに?)
吊るされた看板を目にして、瞬間的に首をひねった。
今日は定休日ではないはずだ。
自然と、視線が行くのは店の中。
ガラスの向こう側。
closedの札はかかっているが、ミリアはいつものようにカウンターの向こう側で作業をしている様子。
「…………?」
店にいるのに、閉店とは。
これまた、どういうことだろう?
エリックは、瞬間的に瞼の中で瞳を惑わせ
”こんこんっ”
と、窓を叩いて覗き込んだ。
瞬間的に上がるミリアの顔。
ばちっと目が合ったのを合図に、エリックは扉を押し開けて
「────……ミリア?
今日は店を閉めているのか?
大口の注文でも入っ」
「────きたっ!」
「…………!?」
エリックの言葉をかき消して。
カウンターの内側から飛んできた声に
ぴくんと驚き、目を見開く中
ミリアは彼の前に飛び出ると、
「待ってた!
マッテイタ!
待ってたのキミをっ!」
「────ど、どうした?
そんなに歓迎してくれるなんてう」
────わしっ!
むんずっ!
────── カ ッ !!!!!!!
「キ ミ の ご 主 人 様。
やるならヤルと早目に言ってくれる???」
「…………えっ?」
その剣幕に、またも
『話題』がすっ飛んだのであった。