4-7「食用になってからおいで!」(7P)
シルクメイル地方・ノースブルク諸侯同盟内・ウエストエッジ。
それが、彼女の働く街。
4階建てのアパートメントの3階から。
速足で階段を駆け下りて、そして外に出る。
赤茶けた屋根。
白く綺麗な壁の家々。
「────んんんっ!
夏だなーっ! きもちーわーっ!」
燦々と降り注ぐ
爽やかで柔らかな8月の光を受けて
ミリアは大きく伸びをし、気持ちを切り替え歩き出した。
「おー! ドラゴン飛んでる!
きもちよさそー!」
その ハニーブラウンの瞳に
竜が飛ぶ────晴れやかな青空を映して。
しかし、それが地獄のはじまりだった。
客は言う。
口々に、店に押しかけ述べていく。
「ミリアちゃんミリアちゃん!
このドレスリメイクできるかしらっ?」
「ねぇー?
ビスティさん? これ〜、アレンジできない?」
「太っちゃったの! ウエスト直せるわよね!?」
「このドレスにはコサージュがひつよぉなのぉ〜! おかーさまぁ、買って買ってぇ〜??」
────この街では
たまにこういう、入れ食い状態の時期が来る。
この街に暮らして5年も経てば
事の原因がなんなのか、手にとるようにわかるのだが
今度の『入れ食い』は、ミリアにとって
笑って済ませられるものでは無かった。
客のオーダーを聞き、提案し、受注する彼女に
客らは口を揃えて言うのである。
『出来上がりは、この日までに!』
『エルヴィス様が舞踏会を開かれるの!』
#エルミリ