4-7「食用になってからおいで!」(6P)
パンを頬張りミルクを飲み干し、ミリアは立ち上がる。
足が向かうは”掛けるだけタイプ”のクローゼット。
手が求めるのは、華やかで素朴な『町娘の服』。
「────きょーは、なーに着よっかな〜♪」
綺麗に掛け、並べた服を前に
彼女はご機嫌に口角を上げた。
見つめる先は、彼女の大好きな場所。
洋服がかけられているクローゼット。
買ったもの
初めて作ったワンピースドレス
お気に入りの巻きスカート
実家のクローゼットとはわけが違う。
色鮮やかで、『着たい』欲を刺激してくる素晴らしさ。
それを、選べる”楽しさ”。
こんな気持ちは
この国で暮らすまで、知らなかった。
白くやわらかな『モスリン・ミューズの部屋着』を脱ぎ、ハンガーに釣るして
彼女が選んだ服は
薄い麻素材の長袖インナーに
ふんわりとしたシルエットが出る、ハイウエストのスカート。
それを、手慣れた様子で綺麗に身につけ
上からコルセットベルトできちんと固定し
ビスティで余っていたリボン一本、引き抜いて
胸元まであるブラウンダークの髪を、高い位置でまとめ上げる。
鏡の前で軽くメイクを施し、脇に飾った小さなポストカードの『オリビアとリック』を一瞥。
そして、微笑んだ。
リボンで髪をまとめ、飾ることも
クローゼットに華やかな色が待つことも
推しを眺めることも
彼女にとっては「手に入れた幸福」だ。