4-7「食用になってからおいで!」(4P)
ぼんっ!
ぷすっ!
…………しゅううううう…………
「……あ。やっべ、また焦がした……
どーも調節難しいよね〜」
空気玉の中が、一瞬にして業火の処刑場と化し
”ぼてっ!” と音を立てて落ちたパンに、苦々しく独り言。
ミリアの炎にあぶられた丸いパンは、表面が見事に真っ黒になっていた。
彼女は料理が下手というわけではない。
魔法の力加減が難しいのである。
「あーあ。……まあ、
別に焦げたやつでも食べるからいいんですけど~」
焦がしたパンにぶつぶつ言いつつ、キッチンの隅。
ジャムを塗ってミルクを注ぎ、そして丸椅子に腰かけパンを頬張りはじめる、本作のヒロイン。
齧ったパンは焦げ臭く、そしてジャムを塗っても
口の中に広がるのは────苦味である。
「……にがっ……
まあ、これぐらいならイケる、うん」
呟きながら咀嚼する。
こくんと飲み込み、トマトを口の中へぽい。
嚙み潰した途端、採れたての実が口の中で弾けて
独特の青臭さとトマトの果肉を感じながら
そしてもう一度、焦げたパンを頬張った。
「…………ん〜。
やーっぱ外でも魔法使っとかないと、
どんどん下手くそになってくな〜
もっと頻度上げないとだめかな〜
でもここ、マジェラじゃないしな〜
使う場所がな~
外でやるわけにいかないしな~
家の中はねぇ〜、危ないしね〜〜〜
でも、マジェラでローブ着るぐらいなら、魔法捨てるじゃん〜〜?」
と、悩まし気に大きな独り言。
キッチンの隅、一人ミルクを口にする。
彼女の生活は質素だった。