1-6「ねえ、脱いで?」(2P)
「こー見えても、トイレや中は綺麗だよ?
アンティーク工房みたいでいい味出してるでしょ。
オーナーの親の頃は純粋に縫製工房だったんだって。それをオーナーが改装したの。
おかげで他のショップより少し手狭なんだけど、「それが」良くない?
メニューもイマドキ珍しい木彫りだし。
シャルメも、見て?
これ14年も前のなんだよ〜」
「…………『シャルメ』?」
言いながら、カウンターの上。
彼女が『布』を引き抜いたのとほぼ同時。
姿を現した『シャルメ』に、エリックの、目の色が──変わった。
────先ほどから気になっては、いたのだ。
カウンターの作業動線を遮るように、堂々と鎮座し、隠されていたその存在。
縫製工房のお友達で『大事な相棒』は
井戸の手押しポンプと同じ、深く濃い──重厚な緑色。
鉄製の本体 頭部にセットされた巻き糸が、本体内部を通って、縫い針の先を通る。
『等間隔 魔動 縫製機 シャルメ』
今や服飾産業になくてはならない革命機だ。
今は古ぼけた、無骨な本体に彼女が手をかざすと同時
ぽわんと灯りが点り
糸を通した針の先が────きらりと輝きを放つ。
その様子にエリックは思わず息を吸い込んだ。
シャルメが自体が珍しかったのではない。
彼が驚いたのは その『型』だ。