4-7「食用になってからおいで!」(2P)
きゅるるるるる! ぴゅるるるるる!
ちゅんちゅん、ぴちちちちち!
ほっほー! ほっほー! ほろっほー!
クルッポクルッポー!
「────…………ぅるっさいトリっ!」
────ざあっ!
ばさばさばさっ!
窓の外で繰り広げられていた小鳥の井戸端会議に耐え切れず、半分キレぎみにカーテンを開けた。
そして、ぼさぼさ頭のまま鳥の消えていった空をびしっ! っと指さし、
「────食用になってからおいでっ!
生きてる鳥には興味ないですっ!」
はっきりきっぱり、虚空に向かって言い切る彼女。
────念のため言っておくがこれが、本作のヒロイン『ミリア・リリ・マキシマム』。
盟主の男に騙されている女主人公だ。
しかし。
お世辞にも『ヒロイン』にはふさわしくない顔つきで、ぼさぼさの髪を両手で”カリカリカリ”と掻く彼女は
朝が、得意な方ではなかった。
どこかの盟主のように、ストイックに走ったりしないし、何もなければ特別早起きをすることなど、無い。
休みの日は出来うる限りの惰眠を貪り
ひどい時は昼過ぎにようやく動き出すこともあるタイプだ。
そして、仕事のある日は『それなりの時間に起きて、それなりに身支度をする』。ごく普通の『一般人』である。
その『性格と切り返し方と、出身国』を除いては、だが。
……ふわっふぅあぁ…………
ベッドの上。
ぐしゃぐしゃーっと掻いた頭もそのまま、カーテンを開けた窓を背景に、大きく伸びを一つ。
寝起きの彼女を包むのは、白く柔らかな素材のワンピース。
透け感のあるシフォン生地で作られた『部屋着ドレス』で
赤ん坊のベビードレスを大人のサイズにし
透け感と色っぽさを強調するそれは
近年『モスリンドレス』『ミューズ・モスリン』とも呼ばれ、ここ数年、ウエストエッジでは『女の子の部屋着』として爆発的な人気を誇っていた。
可愛い上に、被るだけでお手軽ということで
ひとりで過ごす部屋着にはもってこいなのである。
そんな『可愛らしいミューズ・モスリン』がもたらす雰囲気を、壊すように
「────あ────あぁぁぁぁあ~~……、
まあ、目覚ましってことでちょうど良いか〜」
大きな大きなあくびと共に、おもいっきりを伸びをして独り言。
『ミューズ・モスリン』は本来
男性を魅了するランジェリーとしても売り出されているのだが
ミリアに買われたそれは、その役割をこなしたことは一度もなかった。
「…………ねむ」
だるだるとした寝ぼけ眼がとらえるのは、チェストの上に置かれた時計。