4-6「パラ見でオール却下」(5P)
「中途半端な筋肉はいらないわ。
それでいて、頭の切れる人がいいの。
そうでなければ、絶対に嫌よ」
「…………、」
「貴方も、連盟の次期国王はふさわしい人がいいでしょう?」
「……筋肉で国を治めるわけじゃないと思うけど?」
「……それでも、第一条件なのよ。
どこかにいないかしら? 素敵な胸筋を持つ男性は……」
「────…………」
はぁ~、と悩まし気に空を仰ぐキャロライン王女に、一瞥。
エルヴィスはその冷ややかな目をくれると、短く息を吐いて、言った。
「────そういえば、君。
昔そこの聖騎士像を『素敵』だと拝んでいたよな?
君の求める筋肉量は知らないけれど
あの聖騎士像にでも求婚したらいいじゃないか」
「────────エルヴィス。
貴方。
連邦会議にでもかけられたいの?」
「────ああ、それは失礼いたしました」
「…………っ」
怒気を放つキャロラインに
全く反省の色など乗せていないエルヴィスの『反省の言葉』が返る。
互いに『一国の主に向ける口調ではない』応酬で、二人を包む空気は最悪だった。
互いに『嫌いではない』が、
決して好きという仲でもない皇女と盟主が、目も合わせぬ中。
その声は、遠くから飛び込んできた。
『ねえ見て、
キャロライン様とエルヴィス様よ……!』
『またご一緒されているわ……!
仲がよろしいのね……!』
「………………」
「………………」
────途端死に絶えていく二人の顔。
表情が完全に絶命した皇女と盟主を差し置いて、声はそのまま聞こえてくる。
『本当にお美しい……!』
『何をお話しされているのかしら?』
『きっと愛を語らっていらっしゃるのよ!』
『きゃあーっ!』
『………………』
──それに。
「…………」
キャロラインは険しい顔つきで黙り込み
「…………はあ…………」
エルヴィスは、げっそりとした息を吐いた。
何とも気まずい空気である。
ラブラブどころか牽制し合って──いや、結婚を押し付け合っているし一触即発状態なのだが、どうしてこうも外野というものはすぐに恋愛関係にしたがるのか。
『………………………………』
互いに、顔を見合わせることもなく。
ただ、じーっと
聞こえてくる言葉に口を閉ざすが、『声』は収まらない。
『ねえっねぇっ!
エルヴィス様ってお相手は……』
『次期国王ってやっぱり……!』
『──しーっ!
まだ発表になってないのよ……!』
「………………」
「………………」
『………………』
廊下の屋根を伝って響き聞こえたその会話。
二人はまた、なんとも言い難い沈黙を纏い──────