4-6「パラ見でオール却下」(4P)
「────キ ャ ロ ラ イ ン 皇女」
「私に言わないで頂戴。」
ぴしゃん!
びきっ!
キャロルの返しに青筋を立てた。
この女、旧友とはいえ無理難題を吹っかけてくる厄介な皇女さまなのある。
彼は彫刻のような表情をにーっこりと微笑ませ、隠し切れぬ圧力を押し出しながら、拳の頬杖で言葉を発す。
「…………キャロライン様?
私ども領から出した、『有力貴族』の写絵はどうされました?」
「見たわよ」
「────それで?」
「無理ね、あれでは結婚できない」
「……何度目だと思ってるんだ」
「何度目かしら?」
「──あれだってウチがどれだけ必死で集めたか、わかってるのか?」
「言ったでしょう、筋肉のない男は無理だと。」
「君の目に適うような男を用意しろって?」
「そうね? 最低でも鎧の上からでもわかるぐらいじゃないと」
(…………ならそういう大会でも開け……!)
断固として譲らないキャロラインの主張に思わず毒づいた。
エルヴィスにとって、これもイライラの種であった。
キャロラインとエルヴィスは『級友』だ。
鉄の皇女と囁かれる彼女に対し、彼女の父が生前こっそりと『なんとかしてくれ』と頼み込んできたのである。
隣国の王の頼みとあれば、断るわけにもいかず
何度か縁談の支援をした。
しかし、
エルヴィスが領内からかき集めた『選りすぐりのエリート』を、彼女はパラ見でオール却下したのである。
彼は、能力・財力・人柄などすべて考慮したうえで厳選したのだが、キャロラインは『筋肉が足りない』と悩みもせずにポイをしたのだ。
一国の皇女にたいして盟主が縁談を用意するのも不思議なものだが、現在こうなっているのだから、仕方ない。
聖堂の花園、円卓を囲み
キャロライン皇女は、姿勢を正して書類を揃えながら、ツンとした声色で言い放つ。