表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/592

4-6「パラ見でオール却下(3)」



「────なあ。


 ……あ れ(・ ・)

 …………なんとかならないのか」


 内心。

 心底うんざりと言うエルヴィスに





「ありえないとは言っているわ。

 ……けれど、おさまらないのよ」


 痛烈な顔をするキャロライン。




 そう。最近はこれ(・・)も、二人の頭を悩ませていた。

 確かに『美男美女』。

 側から見たら『お似合い』ではあるのだが、互いにその気は全くない。




 キャロラインとリチャードのペアの場合このような言葉は聞かれないのだが、相手がエルヴィスになった途端、なぜかこうなるのである。




 しかしエルヴィスにとって

 キャロラインは『かつての級友でありビジネスパートナー』だし。


 キャロラインにとっては『忌憚なく意見をくれる盟主』だ。



 お互いに

 『恋してるのかしら? 愛し合っていらっしゃるのよきゃっきゃ』と言われることすら鬱陶しい。



 ──のだが。




 ──────はあ…………



 鬱陶しい取り巻きを視界の隅から消し去り

 エルヴィスは、今日何度目かのため息を落とした。




 うんざりと目を向けるのは『キャロラインに』である。




「……皇女と噂になるこっちの身にもなってほしいんだけど?」



 心の底から『勘弁しろ』という意味を込める。




 そんなエルヴィスの射るような視線を受けて

 キャロラインもうんざりと息を吐き出すと、



「………どちらかが結婚するしかないのかしら。

 相手を見つければ、周りも騒がないでしょう」


「────なら、あなたに期待していますよ?

 キャロライン・フォンティーヌ・リクリシア皇女?


 (わたくし)めには当分、その気もありませんので。」

「…………っ!」





 その

 『 そ っ ち が 先 に 行 け 』

 という圧と棘が詰まりまくったエルヴィスの声に


 キャロラインは紅玉の瞳の一瞥を送り、




「……貴方。お相手は?」

「居ない」



「貴方に好かれたい令嬢もたくさんいると聞くわ?」

「だろうな」



「随分、舞踏会やってないわよね?」

「……ああ、やりますやります」



「…………綺麗な子も多く招くのでしょう?」

「そうですね?」


「いい出会いあるかもしれないわね?」

「そうですね、

 

 ────ああ。


 皇 女 様 も

 パ ー テ ィ ー を 開 か れ て は?


 『男性ならいくらでも』来ますよ?

 皇 女 様 ?」


「…………っ!」

「………………」



 ちゅんっ……ぴちちっ……

 ぴちちちちちっ……………………



 王家の中庭。

 夏に咲き誇る花々が見守る中。

 もはや会話も生まれぬ二人の沈黙を、小鳥のさえずりがカバーして────……





(……盟主としては評価するけれど。

 この男と結婚しようなんて、絶対に思えないわ……!

 女神のような人じゃないと無理よ!)



(…………結婚、ね…………

 ────俺には、縁遠い話だ)





(…………おお、コワァ…………

 ……ほんっと仲悪いよなぁ……

 これでよく戦争にならないもんだぜ……)


 


 テーブルを囲む皇女と盟主。

 草葉の陰で身をすくめる王子。

 各自各々、それぞれに、憮然と呟いて。




 はぁ──────……

 深い深い ため息をついたのであった。
























 それは、よく晴れた8月の初頭。

 エルヴィス盟主が聖堂を訪れた日から数日経った、ある日の朝。




「…………ん……………………」





 ぬくぬくとベッドの中で寝返りを打つ女性が一人。

 彼女の名前はミリア・リリ・マキシマム。自室のベッドの中、まどろみを味わう彼女は、まだ知らない。





 この日を境に、自身が地獄を見ることを。










         #エルミリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ