4-6「パラ見でオール却下」(1P)
「聞いてほしいのだけど。
私、今度ドニスに行くことになったわ」
ネム連邦・国際円卓報告会。
今まさに帰ろうと支度をし始めたエルヴィス盟主とリチャードの動きを止めるように
白銀の髪・赤の瞳を持つ皇女・キャロラインは話し出した。
その張りのある声にエルヴィスは、ぴくんと一回、興味の無さそうに眉を跳ね上げ問い返す。
「…………『2週間』?
…………国賓訪問か?」
「そう。招かれたの」
「…………へえ、ドニスに」
言われ、エルヴィスは若干こうべを垂れながら相槌を打った。
その声色に『へえ。以上の何物でもない』という色をのせて。
────ドニス。
キャロライン皇女が治める『セント・リクリシア』の南東に位置する小さな国だ。
ノースブルク諸侯同盟とは特に目ぼしい国交もしておらず、国の認知をしている程度。
リクリシアも、そう国交を深めていたわけではない。
リクリシアの王、つまりキャロラインの父が亡くなってからはいまだ国交もなく、今回が初めての国賓訪問となる。
(ふぅん……ドニスね……
先の大戦でも特に目立った支援もせず、小さくなっていたあの国だよな?
軍事力はほとんど持っていない、国力のないところだ)
訪れたことはないその国の情報を
知りうる限りで頭の中に並べるエルヴィスに
キャロラインはコーヒーの入った品のあるカップを片手に一口。コーヒーを味わうと、赤き瞳を開いて言う。
「現国王が誕生日に生前退位されるらしいの。
王子と王女が集められて、盛大な式典を開くそうよ」
「…………へえ。誕生日」
「ドニスの王っつったら〜、もう70超えてなかったか〜?」
円卓を囲み、拳で頬杖をつくエルヴィスの隣
後ろ頭に両手を当てて、宙を仰ぐのはリチャードだ。
その呑気な声を一蹴するように、キャロラインは瞳でリチャードを射抜くと、張りのある声で答える。
「そう。あそこは20人も王子と皇女がいるのよ。」
「…………は〜〜…………20人……」
「…………20人…………」