1-6「ねえ、脱いで?」(1P)
ミリアは考える。
先ほど出会った青年『エリック』の様子を観察し、その身なりから。
(……あとは〰〰そうだなあ〜。
もしかしたら、どこかのお家に仕える使用人なのかもしれないな? 容姿はいいみたいだし、お屋敷の主さんが気に入りそうな感じだもんね。
あ、あれだ わーかった!
『あまりにみすぼらしい格好はさせられない』って、家主さんが服を支給してくれてるーとか!
あぁー! それかもー!
きっとそれー! わたしあったま良)
「…………なあ」
「────はいっ!」
いきなり声をかけられて、ミリアは背筋を伸ばして返事をしていた。
完全に意識が飛んでいた。
楽しみの妄想から引き戻されて、ミリアの頭を回るのは危機感である。
胸の内、
(やっば、声に出してなかったよね……!?)
と、どっきんこどっきんこ煩い胸に手を当てつつ振り向く彼女。
しかしエリックは、艶やかな木製のカウンターに右こぶしを置くと、静かに顔を向け、
「ここは、営業してどれぐらい?」
「え? えーとー。
オーナーの親からだって言ってたから〜〜〜
軽く50年ぐらいじゃない?」
何気ない問いに返した、曖昧な返事。
首をかしげながら、『んー』と宙を仰ぐミリアに、エリックはゆっくりつづけた。
「…………へえ。
じゃあ、割と老舗のほうなのかな。
君は、ここで雇われているだけ?」
「まあ、そーだね?
なんで?」
「いや、別に。他意は無いよ。
……ただ、店内が予想より昔の装いだったから」
「あははは!
正直に言っていいよ? 『古い店だ』って。
まあ、そこが気に入ってるんだけどねー。」
彼の気遣いを笑い飛ばし、どストレートに言うミリアはご機嫌だ。
カウンターをすりすりと撫でる指が雄弁に語る。
『この感じが良いんだ』と。
愛おしげに撫でるミリアは
次の瞬間
ぱっと顔を上げ、そこに両手をつきながらエリックに顔を向けると、彼に紹介するように店内を一望し、