4-5「それは小さな綻びのような」(4P)
「高い原因もな~?
商人に聞いても『わかりません』だけでなあ。
『わからないじゃなくて、調べろ』って言おうかと思ったんだが、下手に動き回られても迷惑だろ?」
「────それで盟主に?」
「そそ、うちのスパイに。よろしくな!」
………………はぁ………………
言われ、エルヴィスは息を付いた。
まるっきり他人事のように、腕を上げつつ言うリチャードに疲れが噴き出してくる。
頼んでいることが『重い』のに、その頼みかたが釣り合っていないのである。
金はもらっている。
仕事だと、割り切ってもいる。
──それが、この国のため──
産業のためになることも、わかっている。
────しかし。
チクリと言いたい、エルヴィスの心情。
「…………投げ方が雑すぎるんだけど?」
「あれぐらいゆる~いほうが、盟主様も受けやすいだろ?」
「────ハ、冗談にもほどがあるな。
あの文面を読むこっちの身にもなってくれ」
「苦労したんだぜぇ? じじいっぽい雰囲気出すの」
「……そんなところに力を注ぐな」
「…………何の話なのよ?」
「まあ、その?」
「……………………」
自分たちだけで会話を進める男性陣に、キャロラインは鋭い目つきで声を投げたが、男二人は明確に答えない。
トントンコンコンと書類を揃えるキャロルを尻目に
リチャードは誤魔化すように紙をめくり
エルヴィスは怪訝と言わんばかりに息をついた。
そして────
盟主の眉間に密集する『皺』。
その瞬間、彼の脳ではミリアが飛び出し
『眉間のしわ~、跡がつくよ? まだ若いのに……』と哀れみを含んだ声がする。