4-5「それは小さな綻びのような」(3P)
(────いや。
情報源はあのスネークだぞ。
そういう情報は、真に受けるべきじゃない)
しかし、ぎゅっと、頬に力を入れる。
そして、振り払うようにトントンと資料を集め始めると、
(…………『何かを企んでいる』・もしくは『楽しんでいる』と考えた方が自然だ。
第一、彼女は俺にそんな感情を抱いては)
「────で。
エルヴィス? おまえさん、なにかあっただろ?」
「………………なんで?」
思考の途中。
タイミングを見計らったようにかけられたその言葉に、しかしエルヴィス盟主はゆっくり目を閉じ、声に『怪訝と苛立ち』を滲ませ一蹴した。
いくら相手が『協定関係の王子』であっても、詮索されるのは好きじゃない。
スネークを相手にしている時ほど棘はないが、その声から温度をかき消して
動揺を隠すように
揺らぐ気持ちを固めるように
彼は、すぐさま”陶器の仮面”に皮肉の笑みを浮かべ、リチャードに目を向けると
「────……ああ。
強いて言うなら
『依頼のおかげで目が回りそう』……かな」
「そうそうそれそれ! 依頼!」
エルヴィスが頬杖を突きながら
煽り口調で言った言葉に、返ってきたのは勢いのある返事。
彼が内心(これ以上言うのなら、どう返そうか)と企てていたことも吹っ飛ぶ話題変更に、
(……また唐突に話が変わったな……)
と呟くその前で、リチャードは前のめりでテーブルに肘を置く。
「それを聞きたかったんだよエルヴィス!
毛皮の件、どうなってる?」
「──『毛皮』って、なんの話かしら?」
「……ああ、キャロル、ちょっとな〜!
エルヴィスも見ただろ?
あんな値段ありえない!
商人に言われて、『おかしいだろ!?』って凄んじゃったもんな〜」
「…………”凄んじゃった”って。
君が? その商人に同情するよ」
「おいおい。
オレは、おまえさんみたいにプレッシャーかけないぞー?」
「…………」
とりあえず勢いに合わせるエルヴィスだが、リチャードから返ってきたのは『おまえさんとは違うんだがー?』という表情。
リチャードは、エルヴィスの冷静呆れモードを歯牙にもかけず、言葉を続ける。