4-4「ちらりちらつく、”らしくない”」(5P)
(────……ヴァルターは……
あいつは『オリオンの忠実な側近』だ。
俺というより、『ウチ』だろ)
冷めきった声で呟きながらエルヴィスは、表面上・素知らぬ顔つきで『マジェラのカード』に手を伸ばす。
冷めた目つきで求めたその箱は
サラリとしていながらも重圧で
カード一枚一枚も、手触り良く気持ちいい。
さらさら
すべすべと撫でる指が味わう感触から
エリックの頭の中。
出てくるのは、”興味”と”連想”だった。
(……へえ……、マジェラのカード……ね
ミリアも、これで遊んだのかな)
『カードゲーム』。
暇つぶしに、たしなみに。
そして、貴族との時間の消費に戯れたことはある。
──子供の頃に相手をしてくれたのは、側近のヴァルターと、そのまわりの大人たちだった。
(────ヴァルターは……あいつは、俺に遠慮して、本気で相手をしてはくれないだろうな。
ミリアはどうだろう?)
瞬間的に思い浮かぶは『この前の彼女』。
何度腕相撲を挑んできては、完膚なきまでに負けてリベンジを申し込んだ来たミリアの顔だ。
負けて悔しそうにするミリアの顔が目に浮かび──くすっと、内心、笑いが漏れる。
(…………ふっ!
……負けず嫌いなミリアのことだ。
きっとこのカード遊びも、負けるたびに何度も勝負を挑ん)
「………………なあ。エルヴィスぅ」
「?」
おもむろに届いた、リチャードの声。
その”聞きたいんだが”と言わんばかりのトーンに
エルヴィスが目を上げた時。
視線の先で────リチャードの新緑の瞳が、金の髪の間から彼を見る。
「…………?」
その興味に満ちた視線に、彼は小さく眉を上げ、首をわずかにひねり────
眉間に、しわを寄せた
その時。
「……やっぱりおまえさん……
最近、なーにかあっただろ?」
「…………え。」
────その。
予期していなかった王子の言葉に
エルヴィス────、いや。
エリック・マーティンは 僅かに
動きを止めたのであった。