4-4「ちらりちらつく、”らしくない”」(4P)
戸惑い向けるは『怪訝な顔』だ。
「……まて、リチャード。
『かもしれない』って、説明はなかったのか?」
「ああ、なかった」
「…………聴かなかったのか?」
「ちょうど留守だったんだよなあ、オレ」
「…………」
お気楽~に、『だったんだよなぁ〜』と。
のけぞり後ろ頭を両手で支えつつ、臆面もなく言うリチャードに、エルヴィスは黙り込んだ。
そして、じとっと向ける『刺す視線』。
エルヴィスの唇の裏から、今まさに
『いや、それでも使い方ぐらい聞くよな?』
が出そうになった、その時。
リチャードは手元にあるカードを一組、エルヴィスに向かって差し出すと、ニカッ☆ と微笑み彼に言う。
「おまえさんにやるよ。
マジェラ専門だろ?」
「…………『マジェラ専門』って……
うちは『魔具の取り扱いをしている』だけだ」
「じゃあ、キャロル。
おまえさんはどうだ?」
「──要らないわ。そういったものを集める趣味はないの」
「じゃあエルヴィスだな!」
「…………なんで俺に」
「魔具専門だろー? エルヴィスがあってる!」
「いいじゃない。
エルヴィス?
貴方のところの、ヴァルター……だったかしら?
彼と遊戯を楽しんだら?
たまには執事と遊ぶのも、息抜きになるのではないかしら」
半ば押し付けられそうになる雰囲気の中。
キャロラインの、凛とした友好の言葉に
エルヴィスが思い浮かべるのは『執事のヴァルター』だ。
強面で、体格もいいエルヴィスの側近である。
父の代からで、白髪をたたえながらも常に気を張っている男だ。
ヴァルターの、いかつい表情を思い浮かべ、次の瞬間
「…………あいつは…………、まあ。
そうかもしれないけど」
そう、言葉を濁して。
エルヴィスはキャロライン皇女の言葉をため息交じりに躱し、澄ました顔で瞼を閉じ、息をついた。