4-3「盟主《エルヴィス・ディン・オリオン》」(7P)
「…………まあ…………
それだけ年齢を重ねてるってことだろう?
自分が信じてきた感覚や常識が通用しなくなると、人間は守りに走るんだよ」
「…………」
「…………」
冷めた声を吐くエルヴィス。
その声に抑揚などはなく、ただ淡々と口から出すのみ。
言った言葉に返ってくる
リチャード『じっ』っとした視線と
キャロラインの無音の圧力を受けながら
エルヴィスは手元の珈琲に角砂糖を3つほど沈めると
ため息混じりにはっきりと、言葉に出した。
「……実際、そういう場面に遭遇すると、どうしていいか解らなくなることもある。
一概に彼らを堅物だと否定はできない。
今まで積み上げてきたものを壊して改めるのは、簡単ではないんだ。
経験や常識が通じないと、まともに混乱することもあるから」
「……………………
……………………
……………………」
その、冷めた口調の中にある『現実味』。
それを感じ取り、一瞬止まったリチャードは
金の髪から覗く深緑の瞳で
じぃ……と彼を見入ると、たっぷりと間を取り声をかける。
「…………なあ、エルヴィス…………」
「なに」
「…………そういう場面があったのか?」
「え?」
言われ、エルヴィスは珈琲をかき混ぜる手を止め、小さく顔を上げた。
忌憚なく・冷静に述べたはずの意見に返ってきた言葉が予想外で、動きが止まったのだ。
(────”なにか”)
と胸の内で繰り返し、僅かに走る動揺の色。
それを隠しながら瞳を惑わせる中。
頬杖をついたリチャードは、探るような目線を送ると、