4-3「盟主《エルヴィス・ディン・オリオン》」(4P)
キャロラインの声を遮って。
少々慌てた声が聖堂の花園に響いた。
盟主と皇女、二人が揃って目を向ける中、足早に近寄ってくるのは一人の男。
年の頃なら20代半ば。
金の髪をゆるく縛り上げ、長めの前髪から新緑の瞳を覗かせる。
国のカラー・青の公服をまとった──
王子・リチャード・フォン・フィリッツ。
三国国際連盟・アルツェン・ビルドの第一王子である。
どちらかというと面長で、優しい瞳の持ち主だ。
────そう。
盟主でありスパイのエルヴィスに、まるで『年配の男性が若い女性に贈るような文面』で依頼を出してきた、あの男である。
聖堂の花園を、のっしのっしと突っ切りながら
『すまんすまん!』と手を振るリチャード王子に
エルヴィスとキャロライン
二人の呆れに満ちた視線が注がれる。
「…………遅いぞ、リチャード」
「貴方ね。この前も遅れてきたじゃない」
「わーるかったって!
そう睨むなよキャロル!
”皇女さま”は〜、微笑んでいたほうがいいと思うぞぉ〜?」
「────余計なお世話よっ!」
「……いいから座ってくれ、リチャード。
早く話を進めたい」
「はいはーい」
先にいた二人に、怒りと呆れで迎え入れられ
金髪・緑目のリチャード王子は、ひょいっと肩をすくめて席に着いた。
太古の昔、ネム・ミリアが眠ったという大聖堂の花園。
円卓を囲む、この三人。
ノースブルク諸侯同盟 盟主
エルヴィス・ディン・オリオン
セント・リクリシア王国 皇女
キャロライン・フォンティーヌ・リクリシア
アルツェン・ビルド公国 王子
リチャード・フォン・フィリッツ
彼ら三名、三国は
『シルクメイル地方ネム連合国』として協定を組み
同じ神を讃える国同士、目指す未来を共にしていた。
各国それぞれ
彼らの親は早々に亡くなり、正当な王位に就ける30を迎えるまで、『次期主』として、日々国内改革に取り組んでいる。
「────でー? 今、なんの議題だったんだ?」