4-3「盟主《エルヴィス・ディン・オリオン》」(2P)
聖堂の中庭。
手入れされた鮮やかな緑を茂らせる生垣と咲き誇る花々・吹き抜けのテラス。
8月の、燦々としながらも柔らかな日差しを綺麗に避けて、彼らは二人、テーブルに着いて花園を背負う。
盟主・エルヴィス・ディン・オリオン。
皇女・キャロライン・フォンティーヌ・リクリシア。
彼らをもてなすのは二対の気品漂う茶器。
淹れたての珈琲が香りよく辺りを包み込み
王室御用達のパティシエが作るスイーツが、銀素材のスタンドを華々しく飾る。
そう。それは、お茶会。
誰がどう見ても、優雅でエレガンスなひと時。
シルクの様な銀の髪を持つ皇女と
彫刻のような顔だちをしている盟主。
美と美の合わせ技。
並んだ二人を絵画に収めたいと申し出る絵師は後を絶たない。
そんな彼らが向かい合い
語られる話題は──────もちろん。
「────キャロライン。
まず、魔具の普及率だけど。
あれは俺たちの間で大きな誤算があった。
一般人における魔具普及率は、国連が認識しているような数字じゃない。
今調査を入れている最中だけど……、
……実態は、もっと低いと見ている」
「その正確な数字はいつ出るかしら?
事実をもとに予想を立てなければならないわよね?」
「……そうだな……
こちらに関しては、連盟で足を揃えるべきだろう?」
「そうね、その通りだわ。
少々骨が折れるけれど、手配させましょう。
魔具の便利さについては、貴族を中心に広まっているから……
火事などを防ぐためにも、早めの浸透を目指したいわね?」
戦略会議である。
遠目から見れば
『キャロライン様……、本日もお綺麗で。
僕の胸は高鳴っています』だとか
『あらエルヴィス……、貴方も素敵よ?』だとか
愛を育んでいそう────────なのだが。