4-2「今日は副業モデルのリックとして頑張ります」(7P)
いまし方感じた『不思議な感覚』に瞳を迷わせ思考を巡らせる。目が捕らえているのは屋敷の床だが、探しているのは『感覚』の答え。
その、『言いようのない感覚』に、次の瞬間。
ざわっ……!
「────っ!」
背中を走り抜ける悪寒、はじかれる様にエルヴィスは反射的に顔を上げ、あたりを見回した!
感じたことのない”感覚”に、本能が”警戒しろ!”と騒ぎ立てる。
「…………!」
瞳で、神経で見渡すのは、暗い庭。
作られた浅い池、手入れのされた芝生。
今しがた通ってきた橋は闇の向こうで、その姿を見ることはできない。
庭全体を探る瞳も鋭く、しかし体の動きは最小限に、エルヴィスの手が無意識に求めるのは腰のタガー。
(…………誰かいるのか?
…………殺気、というやつ……か?)
「…………旦那様?」
「────アナ。
他に用があるなら後でいい。今はそのまま下がれ。なるべく、素早く。ゆっくりと」
声かけに、声を張る。
何がいるかわからない。
彼は、武器商人の息子だ。
小さなころから常々と『命を狙われる危険』は植え付けられてきた。
それを、実際に体験する機会など近頃は無かったのだが────十分、考えられること。
遠のく足音を聞きながら、彼は、
じり、じり、とすり足で。
一分の隙も見せず、
気を張り巡らせて、
分厚い扉に背を預けた。
探る
気配
張り巡らせる神経は、外へ。
誰かいるのか
いるなら出てこい
(────武術・体術にはたしなみがある……!
ここで食い止める……!)
────しかし。