4-2「今日は副業モデルのリックとして頑張ります」(6P)
──エルヴィス・ディン・オリオン盟主殿
水曜・聖堂の花園で
キャロライン・フォンティーヌ・リクリシア
「……………………」
────黙る。
これはこれで、簡潔すぎる内容である。
(────────まあ……
どこぞのリチャード王子よりましか。)
と、死に絶えた表情をする盟主の前にして
メイドのアナは、様子を窺いつつ、そろりそろりと目を配らせ、
「…………あの……だんな……さま?」
「…………ああ、いや。
なんでもない。
いつまでも外にいては冷えるだろう」
声をかけられ我に返り、
エルヴィスは、アナに目を向けながら僅かに首を振った。
皇女の手紙に心が疲弊しようが、領内問題がどうだろうが、スネークという組合長にたまにイラっとしようが、メイドには関係のないこと。
(────それをこぼすまでもない)
と口を閉ざして軽く息を吐きだしたエルヴィスは
カツンと踵を鳴らし、屋敷の中、
その”境界”を
「…………アナ。
もういいから、君も部屋へ引き上、」
──────踏む。
────── つ ッ。
…………ゥ、……んッ…………
屋敷の中
床を踏んだ
感覚
体
何かが、とおった
「──────……?」
突如、体に流れた不可思議な感覚に、エルヴィスは、足を、動きを、すべてを止める。
考える
(────今のは、なんだ?
…………”走った”?
……いや、”抜けた”?)