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4-2「今日は副業モデルのリックとして頑張ります」(5P)
最後の言葉は口の中。
ぽそりとこぼしたそれに、オリビアが首を傾げ目を見開くが
「────いや? なんでもない」
エルヴィスは素早く首を振る。
心の中で
(……そうやって粉ばかりかけるのも、どうかと思うけど。
そこまで言う義理もない)
と懸念しつつ、彼は、切り替えた。
────何事もなかったかのように
”盟主”であり”紳士”であるように
にこやかで煌びやかな仮面をつけて
「外も暗くなってきているし、送りますよ。
ココ・オリビア様?」
「まあ、ありがとうございます♡ メイシュ様」
ナチュラルに差し出す手。
盟主エルヴィスのそれに細い指を添えながら、歩きだしたオリビアは
澄ました彼の横顔を一瞥し、
胸の内で呟いた。
(……『わかる』……とは、どういうことなのかしら?)
────その日は、本当に『濃かった』。