4-2「今日は副業モデルのリックとして頑張ります」(3P)
真っ赤なヒールに
鮮やかな赤のドレス
金の髪も綺麗に、大きくぱっちりと彼を捉えるのは青の瞳。
「お疲れさまですぅ♡ メイシュ様♡」
しゃなりしゃなりと近づいて、妙に弾んだ『笑声』を飛ばしてきたこの女性。
名を『ココ・オリビア』。
稀代のモデル『ココ・ジュリア』の愛娘である。
モデルの娘とあり、スタイルは抜群だ。
「今日もオリビアのパートナーを務めてくださり、有難うございます♡」
「…………これも仕事だからな。
礼には及ばない」
にっこり微笑み『こくんっ』と首を傾げるオリビアを一瞥し、彼は静かに首を振った。エルヴィスの目線も顔も、オリビアの方になど向いてはいなかった。
やや疲れを見せながら
『はあ……、』と息つくエルヴィスに
オリビアの、にこにこと笑みをかたどっていた口元が、すっと真っ平に伸び、変わりゆく。
「──ほんっとうに固いですよね、メイシュ様は。
『オリビア』はパートナーのはずですのに、ちっとも釣れないではないですか」
「──釣る気もないだろう? わかってるよ」
「あら。御明察ですのね♡」
表面上の『傷ついた』を瞬時に切り替えたオリビアに、エルヴィスは冷めた口調で切り替えした。
この、ココ・オリビアというモデルの女性は
他の貴族令嬢たちとは少し毛色が違う。
盟主であるエルヴィスに対し
最初に発してきたのは「警戒」と「品定め」。
その若さでいったいなにを見てきたのか、
他の貴族令嬢の『エルヴィスさまぁ♡』というすり寄りは、まるで無かったのである。
それでも表面上は粉をかけるふりをしたのだろう。
最初こそ、愛想をふりまくっていたが
今はもう、それもない。
特別仲がいいわけではないし
互いに馴れ合いもしないのだが
他の貴族令嬢たちと比べたら──、少しだけ
エルヴィス盟主と『気持ちを同じくする』時があった。
冷めた様子で肩の毛をはらうエルヴィスを前に
オリビアは、ツンと高飛車に腕を組むと、彼に向かって言葉を投げる。




