4-1「 事件かもしれません」(7P)
「…………ああ〜、これも、わかりませんね。『ボーン・S』と。これだけです」
「…………”ボーン・S”?」
わかるようでわからない単語に、さすがに繰り返していた。
”ボーン”と聞いてシンプルに出るのは『骨』だが、確証はない。
見下ろす目の先、スネークの指の先。
確かに、あるのは『ボーン・S』と表記だけ。
「…………なんでしょう? 骨、ですか?」
「…………骨、だろうけど」
「洋服作りに『骨』、ですか。傘や、そういったものならわかるんですが」
「……芯として入れ込んでいる、とか……?」
「ですかね……?」
「……なにに……?」
「…………さあ。私にはさっっ……ぱり……」
「…………」
「………………」
商工会奥。
魔具ラタンの光を浴びながら、書類に疑惑の視線を向けるエリック。
そんな、至極真面目なボスに────スネークは、伺うような目を投げ口を開くと、
「……ボス。例の彼女に、聞いてみたらどうです?」
「────『例の彼女』って?」
そこを強調するような言い方に、エリックは反射的にトゲを込めた。
スネークが『わざわざ』『名前を伏せて』『思わせぶりに』投げたからかいに、またもいら立つ。『またか』『余計なことをいうな』『今関係ないだろ』を叩き込んでいるというのに、『この男はまた』。
エリックの太く低い声が場を畏縮させる中、スネークはもろともせず、むしろ愉快に「フフッ」と鼻を鳴らすと、