表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/592

1-5「そうよわたしは 着付け師の女」(2P)





 どう見ても本革。

 手入れもされている。

 おそらく仕立ては一級品だろう。



 外目から見ても仕立ての違いが明らかにわかる上、何よりその紐穴に『アイレット』という補強金属とフックまでついている。



 この、アイレットとフックが『また』。

 高級品の証なのだ。




 ミリアの目測、それは『普通に買っても十数万メイルはくだらない』。なので密かに『金持ちの息子か何かかな』と思いもした、のだが。





(────金持ちの息子が『こういうところに来たことない』ってことはないわなあ……)




 首を捻って却下する。

 目の前にそびえたつ、巻き糸の壁に新しい糸を加えながら、唇を平たく潰してそう思う。




(この国で? 貴族の息子が? 

 工房に来たことない?

 ないないない、そんなのありえない)


 心の中で、好き放題首を振る。




 それも、そのはず。 

 彼らが暮らす『シルクメイル地方・ノースブルク諸侯同盟領』はファッションの国だ。



 中でも『ここ』。

 オリオン盟主が治める『ウエストエッジ』は、聖地の隣にあり『女神のクローゼット』と呼ばれている。



 『女神のクローゼット』に仕立て上げたのは、稀代のモデル『ココ・ジュリア』。

 国交と文明の発達の中誕生した、ファッションの広告塔がその発展を促してきた。



 ジュリアの功績はとても華々しく

 戦後落ち込みがちであった服飾業界に花を添え、流行をもたらし、国中にドレスや服の花を咲かせたのだ。




 要するに、『選りすぐりのファッションのメッカ』なのである。

 よほどの貧乏人でない限り、民は皆 それなりの装いをして歩いているのが普通だ。





 近年の流行りは、男性服は『紳士かつ動きやすく』、女性服に至っては『エレガントかつ可愛らしく』。



 女性はふんわりとしたワンピースドレスやスカートを身にまとい、男は襟シャツにパンツという──まさにエリックが身に着ている恰好をしている男性が多い。

 



 それでも質は様々で、安物はそれなりだし、高いものは見ればわかる。

 特に金持ちは装飾や刺しゅう・裏地などにこだわり、上質なものを身に着け、金をかけるのだ。




 ──そのため、見る人間が見れば、一発でわかる。




 『こいつ金持ってるな』と。






 そんなファッションの聖地なのだから、縫製工房やスタイルショップと民は、わりと密接な関係にあるのだが──……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ