4-1「 事件かもしれません」(2P)
「ジョルジャ・シャッシは、スピネル通り103の『ピネル・コロニ303号室』。
マデリン・ブラウンは、ヘンルーダ街道7703『コロニ・イトルタ405号』住まい。
いずれも、3階建て以上のアパートメントで、自室の窓が開いていたとのこと。
調査に入ったものから、”部屋で争った形跡はなかった”と報告を受けています」
「…………報告をよこしたのは……、────ベルマンか」
「ええ。優秀な諜報員ですね」
ちらりと名前を確認したエリックに、スネークはさらりと頷いた。
ベルマン・フラッグ。
彼らラジアルの組合員で、正規の捜査部隊に潜りこんでいるエージェントである。
優秀だが字が汚く、エリックは彼の文字を読み解くのは少し苦手だった。
安紙にベルマンの字で書かれた情報の中から「欲しい事柄」を探すエリックの口から、──それがこぼれ落ちる。
「────”時間”は……」
「ジョルジャに関しては14時30分前。
マデリンがそのあと14時47分。
いずれにしても、30分以内に二人、亡くなっていることになります」
「…………昼……」
(…………俺がミリアと外を歩いている頃か)
スネークの淀みない報告の途中。
思い返すは『自分の行動』。
事件が起こった頃・人が死んだ時。
自分は──”何をしていた”のか。
シゴトとはいえ、女性と二人。
呑気に歩いている自分をよそに、こんなことが起こっていた事実に、ジワリと心が淀む。