4-1「 事件かもしれません」(1P)
ノースブルク諸侯同盟・オリオン領・西の端。
ウエストエッジ・商工会事務所奥。
潰れたバーを改装した部屋で受けた報告に、エリックはまともに眉をひそめた。
「死亡事故? 事件かもしれないとは、どういうことだ、スネーク」
「────それが、まだ断定できないのですよ」
怪訝な声色に、スネークは静かに首を振った。
そして流れるように、脇からぺらりと引き抜いた報告書を差し出すと、
「本当に先ほど情報が入りましてね。
わかっているのは、『亡くなったのは女性である』ことぐらいです。
いずれも若い女性でして……捜査部隊が今、調査に当たっています」
「”いずれも”ということは、……複数なのか?」
「ええ。二人」
エリックが報告書を引き抜くと同時、重々しく頷いたスネークは続きを語った。
「────亡くなったのは二名。
マデリン・ブラウン24歳。
ジョルジャ・シャッシ26歳。
二人とも一人暮らしで、自身の住むアパートメントの前で死亡していました。今の調べから、自室から転落したものと思われます」
「…………”転落”…………、……自ら命を絶ったのか……?」
「わかりません。なにしろ、目撃者がいませんから」
資料を睨み考え込むボスに一言。
首を振り、カツンとかかとを鳴らしたスネークは、テーブルの上に地図を広げて指をさす。




