3-15「フィルターを通して」(6P)
「────私は、『彼女』を知っていましたから。
このウエストエッジでは珍しい愛想の持ち主で、人当たりもいい。もし私があなたの立場なら、白羽の矢を立てていたところです」
「…………それで?」
「────いやぁー、彼女があそこに勤め始めたころのことが、鮮明に思い出されますねぇ……あの頃はまだ初々しい少女でしたが、今では立派な看板娘です」
「なにが言いたい」
──ふっ……
冷徹な声に
ぬらりとした、スネークの笑みが返る。
「────いえ? ただ…………
『ボスは彼女を、どう思われたのか』……、と思いましてね? 気立てのいい娘でしょう?」
「────別に。
彼女はただの利用者だ。
……それ以上でも、以下でもない」
その、伺うような言い回し・雰囲気に
エリックははっきりと言い捨てた。
瞳で射貫いていたスネークから目をそらし
彼は革張りの椅子に腰かけると、両肘を腿に突き
口を開ける。
「────利用できるか、できないか。
盗れるか、盗れないか。
使えるか、使えないか。
それだけだ」
「──なら、いつものように?」
「………………ああ」
ひじの先、力なく垂れ下がった指を緩やかに組みながら、端的に。
『”いつものように”
ミリアの前から消えるだけ』。
────と、言おうとして、一瞬。
彼女の顔が脳裏に横切るエリックの隣で。
スネークは、澄ました顔で一つ頷き
「…………そうですか」
と、意味深に一言。
「…………スネーク。なんだ」
その
やけにあっさりとした口調と雰囲気に
エリックが眉根を寄せ、暗く青い瞳を向けた時。
スネークは 悩まし気に
『哀れ』と言わんばかりに眉を下げる。