3-15「フィルターを通して」(5P)
──火のないところに煙は立たない。
とある国には、そのような言葉があると言う。
噂が立つには
推測が出るのは 少なからず
その原因があるというものだ。
「────いやあ。驚きましたねぇ。
まさか、『彼女』がそうだったとは」
ウエストエッジ・商工会議所・奥。
今しがた到着した彼に対して
スネークは声も高らかにそう言った。
スネークの『愉快』を描いたような声に
エリックは怪訝に顔を顰めて声を張る。
「…………だったらなんだ。
誰を情報源にしようと
お前には関係ないはずだ、スネーク」
「えぇ。そうですねぇ」
『これ以上聞くな』
と突き放すエリックの物言いをさらりと受け止めて
スネークは
ニコニコとした笑みのまま、ボスに目を滑らせると
「ただ────、驚いただけです。
『流石』と申し上げた方がよろしいですか?
「…………は?」
『流石』を強調する物言いに、エリックは不機嫌に声を張った。
込めるのは、『鋭利な棘』と『重い圧』。
『見られた』ことで虫の居所が悪いのに
さらに煽ろうとするスネークの『物言い』にイラっとする。
”怪訝”を顕にするエリックの前
しかしスネークは、口角も滑らかに、鼻をクスリと鳴らして言うのである。