3-15「フィルターを通して」(4P)
スネークには言えないが、エリックは『契約者』である。
それ以前に
出会ってからおおよそ2週間、3度しか経っていないのに
ヤキモチも何もないだろう。
しれっとすまし顔でそこにいるスネークの前で一通り笑い、ミリアは『はーっ』っと息を吐きながら手をぺしぺし動かして、
「っていうか、こわいこわい!
それで好意向けられるとか怖すぎますって!
ないない無理無理、絶対ない!
それにあの人、顔はいいんですからっ、
こんなところでわたし相手に、ぶっ!
やきもっ……あはははは!」
「……そんなに笑いますか?」
「は──っ……、もーやだ、苦しいっ……!
エリックさんは『ただのお客さま』ですっ。」
「あれほど仲睦まじく腕相撲をしていたのに?」
────ぷはっ!
ん゛、んん゛、コホンこほん!
質問をやめないスネークを、ミリアは咳ばらいで笑いを飛ばした。
彼女の中で、どうしてスネーク組合長がそんなことを言うのかさっぱりわからないが、とにかく『ミリ単位ともあり得ない』事柄に、笑いがこみあげてくる。
「……あ〜……
あれは、わたしが無理やりやらせたよーなもんですっ。
全然いないんですよね〜、ああいうのに付き合ってくれる男の人って」
言いながら、彼女が思い出すのは『失礼じゃない』エリックの方。
なんだかんだで
荷物を持ってくれたり
腕相撲に付き合ってくれたり
最終的には
ナンパから助けてくれた彼が蘇り────
落ち着いた顔から、こぼれる『くすり』とした笑み。
そして、彼女はスネークに向かって答えていた。
「……ん。まあ、その〜〜〜、
優しいほうなんじゃないかなーって思ってますよ〜
わたしは嫌いじゃないですね〜
なかなか面白いお兄さんです〜」
「………………ほう。
なるほど。そうですか」
笑いをかみ殺しながらの返答をうけ
スネークはひとつ、さらりと頷いた。
そして
『ふふ、それにしても、ヤキモチって……!』
と、いまだそれを引きずり身をひるがえそうとする彼女に、黙って目を送ると
「────ミリアさん」
「はい?」
「会費、頂いてもよろしいですか?」
「うわっと! すみません忘れてましたっ」
にこやかに声をかけ、『会費回収』というミッションを完遂したのであった。