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3-14「愉快・不愉快・居場所ない」(8P)



(えっ。なんかまずいことしたっ?

 えっ? なにこの、エリックさんの反応っ?

 えっ? なにっ!?

 なにっ!?)




 ひだり、みぎ

 ひだり、みぎ


 エリック、スネーク

 エリック、スネーク



 と、交互に瞳を動かしながら

 ミリアは、首を傾げて、言葉を、カスり出した。




「…………えと、ア、

 あのー……、

 おふたり、お知り合いで……? スカ」

「──いや、知らないな」

 


 その問いかけに、かぶせ気味に答えたのはエリックの方。いつになく硬めの声色にミリアが『ん?』と目を向けた瞬間(とき)、スネークが流れるように喋り出す。



「えぇ。

 どこかでお会いしたことはあるかもしれませんが、私の記憶にはありませんねえ」

「いや。会ったことはない。

 記憶は正しいと思いますよ、スネークさん」

「おや。私の名前を憶えていただき光栄です」

「…………名乗られましたから。

 それぐらいは。」


「……」

「…………」


『…………』




 ──── 黙 。


(…………イヤ…………ダカラ……

 …………ナンなのコノ空気(クウキ)…………)



 男二人。

 止め()なく一気にどばっと話し始めたかと思いきや、瞬間的に黙り込む。



 緩急激しい空気に、ミリアは店員ながらも肩身も狭く、息を呑むしかなかった。


 


(は、挟まれています。

 なんですか、この状況ハ。

 まって何が始まるのこれ)




 男二人から滲み出る、圧力に挟まれて。

 カウンターの内側に隠れてしまいたい衝動を抑えながら、中腰・上目遣いで様子を窺う彼女。



(──つ、ツラい。ヘタに動けない)



 フ────────…………と

 ほそーーーく吐き出しエリックをちらーり……と盗み見る。




 そろりと見上げた彼の顔は

 彫刻のような顔面から『ビリっ』とした圧力を放っていて

 ミリアは思わず目をそらし、もう一度カウンターを握りしめていた。







(……まるで因縁の戦いなんですけど。

 一触即発って感じなんですけど。

 …………やばい、そこのトルソーしまっておいたほうがいいかも)



 彼女の脳内

 些細なきっかけで

 口論と取っ組み合いを始める、スネーク商工会組合長とエリックに巻き込まれ


 ドレスを着たトルソーがひっくり返る未来がちらついて──




「────じゃあ、ミリア。

 …………また来るから」

「え? あ、はい、わかりました?」


 唐突な声かけに反射的に切り返す。



「ミリアさん、会費をいただいてよろしいですか?」

「あ! はい、中身確認します!」




 畳み掛けるように言われ、

 ミリアはわたわたと封筒を探し始めた。





 そんな彼女を尻目に

 言葉も少なく、エリックとスネークがすれ違う。



 そしてスネークは素早く、彼にサインを送るのだ。

 目の動きで『後で』、と。





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