3-14「愉快・不愉快・居場所ない」(6P)
エリックが静かに立ち上がろうとした、その時。
ミリアにその名を呼ばれて、彼はぴくんと動きを止めた。
エリックが反射的に一瞬固まったその瞬間、
ミリアは、カウンターの内側から促すように
中指と薬指がぴたりとついた手のひらの先を、スネークに向けると
「こちら、商工会の組長さん。
スネーク・ケラーさん。
お世話になってる人なの」
『紹介するね』と言わんばかりに述べる彼女。
応えるようにスネークは、すぅ。っと目を細め、左胸に手を添え会釈する。
「スネーク・ケラーと申します、商工会ギルド総合組長をしております」
「────…………ああ、どうもはじめまして。」
「………………ええ。はじめまして。
以後、お見知り置きを」
立ち上がり、正面から向かい合い。
短く言葉を交わす エリックとスネーク。
すっと出した手、交わした握手。
──────そして。
『………………』
無言である。
「………………」
動かぬ顔の奥底から
『余分なことは言うんじゃない。
わかってるだろうな?』
と圧をかけるエリックと
「………………」
にこやかな笑みの下で
ボスの出方を伺うスネーク。
「………………」
「………………」
エリックと
スネーク
凍り、張り詰め切った沈黙が
ずしっとその場を支配して────