3-14「愉快・不愉快・居場所ない」(5P)
よりによって、腕相撲。
そして、相手は”彼女”。
ミリア・リリ・マキシマムだ。
別に、ミリアに対して特別な感情を抱いている訳ではない。
彼女は情報提供者であり、協力者だ。
が、もとより彼は、協力者のことを、スネークをはじめ、誰にも教えるつもりなどなかった。
絶対に。
教えたくなかったのに。
(…………くそ…………!)
ああ、気に食わない。
この前から、どうしてこうもうまくいかないのか。
スネークが『漏らしてしまうかもしれない』なんてことは微塵も思っていない。
問題はそこではない。
とにかく、この男に知られたくなかったのである。
何度聞かれようと。
どれだけカマをかけられようと。
彼女のことを、特定させるつもりなどなかった。
しかしまさか、
協力者として口説き落としたその日にこれとは
自分が迂闊だったとしか言いようがない。
何も知らないミリアと厄介なスネークがいるこの場で、エリックが次に取る手段など────
一つしかない。
────ふうっ……
和気あいあいと談笑する二人をよそに、エリックは短く一つ息をこぼす。
気配を殺して立ち上がるエリックの足元で、
…………かたんっ…………と小さく椅子がなる。
(…………ミリアに挨拶だけして、すぐに引き揚)
「ねえ、エリックさん」
「────……!」