3-14「愉快・不愉快・居場所ない」(2P)
狙いを澄まして微笑みかけるのはミリアの方。
彼はにこにこと帽子をぬぐと、それを胸に置き口を開く。
「──ミリアさん。
お取り込み中、申し訳ありません。
集金に参りました」
しれっと。
言って退けてみせる糸目のスネーク。
彼の視界の外側
地味〜〜〜……に感じる『圧』には、当然
気づかないふりをして。
「あ、はいはい集金ですね!
いつもお疲れ様です♪」
「いえいえ。ミリアさんこそ。
ドレスの見立てからクリーニングの修繕まで、ご苦労様です」
「ふふふ、仕事ですから〜♡」
カウンターに手を突きながらくすくす笑うミリアに、まずはねぎらいの一言。
コツコツと床を鳴らして近づく自分に、店の奥
ボスはこちらを見向きもしない。
そんな二人をスネークは
様子を窺うように目で舐めると
「────お邪魔でしたか?」
気を使った風に問いかける。
「あ、いえいえ! ぜんぜん!」
その問いに、瞬間的に手と首を振るミリアと対照的に
「…………」
表情を動かさぬエリック。
その様子に、
(────それは、そうでしょうね)
愉快だと言わんばかりに呟いた。
ボスの性格は知っている。
スパイ組織のボスで
猜疑心も警戒心も強く、決して群れることのない男。
『一匹狼』と表現するのが適切な『隙のない男』。
組織のトップとして『配下』はいるが、群れて何かをすることはない。
余計な情報の一切を排除し
物事に対して、最適な答えを導き出す男だ。
盟主『エルヴィス』として接したこともあるのだが、これはこれで見事な仮面の被りっぷりだった。
盟主エルヴィスの
煌びやかでニコニコとした笑顔の下に滲ませる
”誰にも隙は見せない”
”本音など、見せてたまるか”
そう、言わんばかりの『壁』と『棘』。
だからこそ『今』・『この状況』は『愉快』で仕方ない。
ビスティ内をするりと見渡し、
先ほどまで喋っていたのが嘘のように、ただじっと黙りこくるボスをもう一度
その目線で舐め
スネークは
ミリアの言葉にわざとらしく目を丸くし小首を傾げると