3-13「あっあっ、んっんっ。」(5P)
今だって、手を振り払おうとすればできるのだが、どうもそれができない。
体に触れられるのも好きではないし、握手をするのだって相手によっては警戒してきたのに
なぜか 彼女のペースに巻き込まれてしまう。
カウンターの上、力無くひらいたミリアの手から、そっと自分の右手を引いて。
エリックは、自由になった右の拳をさすりながら、潰れたミリアの後ろ頭を眺めつつ考える。
コミュニケーションの密度から、彼女の負けん気の強さや、はねっかえりな部分。正義感の強さと臨機応変なところはだんだんと掴むことができてきたのだが。
それとは別に
エリックが気になっている点がひとつ。
彼女の特性なのか、マジェラの女の特徴なのかはわからないが──
(────距離が近いだろ、これ……)
これである。
繰り返すが、彼が知る限り、この国の女性にこんな距離感の女はいない。
たいていは
男性と一定の距離をとるか
それ以上に近寄らないか。
はたまた、好色全開でくるかのどれかである。
こんな
まるで『友達のような距離』で接してくるのは、彼女が初めてだった。
だからこそ、飛び抜けて使いやすそうだと目をつけたのであるが。
そして、連鎖的に
(────これ。
屋敷や組織の人間が見たら、なんて言うんだろうな)
彼の頭の中。
ひそかに過る『もし』の反応。
(…………屋敷は、……まあ、いいとして。
問題はラジアルの方だろ。
あそこのメンバーに見られでもしたら、体裁が)
「────もう一回!」