3-13「あっあっ、んっんっ。」(3P)
「…………なあ。
君の力で俺に勝てるわけないだろ?
もういい加減にしたらどうだ?」
「……わかっ、……ってるけど、
奇跡っ、
がっ、
あっ!」
「──あるわけがない。筋肉量が違う」
力はそのまま。
プルップルの彼女からそっぽを向いて、彼は頬杖を突きながら言い放つ。
ミリアから『勝負!』と言われたその時には、魔法を使って挑んでくるかと思いもしたが、彼女は純粋に力で挑んできた。
馬鹿にされているのか、おちょくられているのか、それともただの馬鹿なのか。
彼女の真意はまるでわからないが────
それにしても『弱すぎる』。
右手一本。
身を入れなくとも、片手で頬杖を着きながらでも、余裕しゃくしゃく。
カウンターを挟んで、顔を真っ赤にしながら力を込めている彼女の『全力』を疑うレベルだ。
まあそもそも性別が違うのだから
腕力が違うのは明らかであるが
『こんなにも違うのか……?』と子供を相手にしているような気分であった。
しかし彼女は諦めない。
カウンターすれっすれのところで、今もぷるぷる耐え忍ぶミリアの手と、その顔をちらり。
エリックは「また」ため息交じりに口を開いて、
「…………なあ。
…………確認なんだけど、
君、これで全力なんだよな?」
「全力じゃないように見えますかなっ!?」
「……見えないよ。
見えないから聞いてるんじゃないか」
勢いよく返ってくる言葉に、エリックは静かに首を振る。
……ハァ……
そしてこぼれる、お決まりのため息。