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3-12「取り引き」(7P)
「…………今のは?」
「マジェラの盟約の儀式ね。
こうして『キミ、裏切ったら許さないからねっ』ってお約束するの」
言う彼女は得意げだ。
握手を交わしたままのそれを、ぎゅっと握りしめる。
「……今の、光が……魔法?
君、俺に魔法をかけたのか?」
「あ、いやいや、演出です。
ただの、演出。
光源魔法。
何の害もない。
でもほら、『契約しました!』って雰囲気出るじゃん?」
「──あぁ……、なるほど、演出ね」
パタパタ手を振りながら、早口で言われて相槌を打つ。
まだ少し、動揺を飼いならせない彼の前、ミリアの調子は変わらない。
「そうそうー!
マジェラでは、これを『どっちが先に言うか』ってね?
10代のころとか、皆それで先攻を────
って、そんなことはよくて。
こっちではそういうの無いの?」
「────あぁ……、そうだな
女神の前で忠誠を誓うことはあるけど……、
こういう儀式はないな」
「そっか。
まあ、国が違うもんね~、そっか~」
「………………」
エリックの受け答えに『ふーん』と小首をかしげるミリアの前。彼の内心は複雑だった。