3-12「取り引き」(5P)
(──……今は、ここまでだな。
『切り替えが早い』ということは、それだけ、短絡的なところもあるということだから……そこはきちんと制していかないと、とんでもないことになりそうだ)
ミリア・リリ・マキシマムという人間と
今までのやり取りで得た情報をもとに
今 考えられるすべての危険を予測し始めるエリックの視界の中で。
彼女は、ぽん! と手を合わせると、
「──あ。
でも、最初に約束してほしいことある」
「…………約束?」
楽しそうに笑う彼女に、エリックがおもむろに目を向けた先。
ミリアは『ぴっ』と指を立てると、
「うん。
『協力するなら最後まで』。
こっちもそれなりのリスクを背負うわけだから
ちゃんと最後まで見届けないと、気持ち悪いじゃない?」
あくまでもかる~く。
ニコニコっとした笑顔で『中途半端にすんなよ♡』と訴えかける彼女の雰囲気に────エリックは、思わず『フッ!』と吹き出し笑っていた。
「……ああ、わかったよ。
今日から、俺たちは相棒だ」
そう、笑いも含んだ言葉で返して
────彼は 思う
『これで、良かったのだろうか』と、ほんの少し。
しかし、無意識に心が言う。
『これが、今のところ最善策だろう』と。
──もしかしたら、うまく進まないこともあるかもしれない。しかしそれは、今 懸念することではない。
すべては任務を遂行するため。
この街の産業を守るため。
民の暮らしを守るため。
────そして。
エリックは、密かに、”ぐっ……”と右拳にちからをこめた。
自分が選んだ判断と
背負いし『責任と役割』に
静かに息を吸い込むエリックの前
ミリアは言う。
「じゃあ、儀式をしないとねっ」