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3-12「取り引き」(2P)


「────どうだろう、協力してくれないか?

 君は、素材の高騰に困っている。

 俺は、旦那様の力になりたい。

 利害は一致すると思わないか?」


「…………協……力…………」




 エリックの提案に、ミリアから返ってきたのは

 ぽそりとした小さな呟きだった。




 それはとても小さな声で、力ないものにも感じるが


 しかし、エリックの瞳には見えている。



 彼女のハニーブラウンの瞳が──金色に光輝いたのが。






 エリックはさらに畳み掛ける。

 思惑は滲まぬ程度の雰囲気で。




「……この様子だと価格はどんどん上がるだろうな……そうしたら、君だけじゃなく、周りの生活にも支障が出る。


 民は困り、喘ぐだろう。

 素材が手に入らなければ──、

 商売も何もないから。

 俺は、そうなる前に、原因を突き止めたい」



 詰める、距離。



 カウンターを挟み、じっ……っと見つめて

 暗く青い瞳で────彼女に訴えかける。




「……なあミリア。

 手を、貸してくれないか?」


「…………てを……かす…………」




 言う 自分の目の前で

 呟く彼女の瞳の奥──金色に輝きだす”なにか”。



 ──エリックは、理解していた。



 彼女がナンパに突っ込んでいく理由。

 『無視できない』と言っていた理由。

 


 正義感・責任感。

 そして、あの一人芝居。

 ────きっと彼女は、『何かになりたい』のだと。

 

 



 ならば、情報源としてではなく『協力者』にすればいい。




 ──彼は述べる。

 憂いを込め、悩ましげに。





「…………俺は、この調査に乗り出して、数か月(*  )になる。

 苦労しているんだ。

 ……なかなか、…………糸口がつかめなくて」


「…………そう……なんだ……」


 

「…………手詰まりだよ、困ってる。

 …………助けてくれないか?」

「………………」




 

 何も言わない彼女から、じんわりとにじみ出る『熱』。

 エリックが感じる、確かな手ごたえ。




  

 その熱が────

 さらに、上がるように



 誠意と野心を持って



 ────言葉を 放つ。




「────君の力が必要だ。

 …………君の快活さと、臨機応変さ。

 5年ものあいだ、出自を隠していた口の固さ。


 特にその、場に馴染む力は見事なものだよ。

 君の力を見込んで……、頼むよ ミリア」

「………………」




 黙るミリアと

 瞳を覗き込むエリックの間を



 熱のこもった沈黙が支配して────……











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