3-11「ぼ?????????」(2P)
今、今。
何を言われたのか、さ──っぱりワカラナイ。
(──えるッ、)
ビスと聞こえたが、空耳だろうか?
(────ぼっ?)
ぼす、と言った気がしたが、それも何かの間違いだろうか?
完全停止した脳の隅、かろうじて情報を処理するミリアの前。
エリック・マーティン……
いや、エルヴィス・ディン・オリオンは、きりりと彼女を見据えながら、堂々と。
「…………俺は、ノースブルク諸侯同盟・盟主『エルヴィス・ディン・オリオン様』に仕えている。
今は旦那様の命令で『毛皮及び生地素材の価格変動』について調べているんだ」
「────っえッ、」
「──旦那様はこの事態を大層 懸念していてね。
ここの冬は寒いし、毛皮を含め服飾産業はうちの要だろう?」
「──────なッ。」
「………今はほんのわずかな変化だが……
『引いては大問題になるかもしれない』と予見されている。
このまま値が上がればそのうち民の暮ら、」
「ッなんでそれ先に言わないの!?」
──だぁんッ! ガタァァァァァァァン!
完全に追いつけていないミリアの前
余裕しゃくしゃく・淡々と。
自分で自分を『様』付けしながらしゃべり続けるエリックに、ミリアは思わず立ち上がり声を張る!
彼の話を聞いているあいだ、言いたいことは山のように出たのだが、集約したのは『それ』。
『なぜ、先に言わないのか』。
立ち上がった反動で音を立て、転がった椅子を気にもかけず、ミリアはびしっ! とエリック・マーティン(エルヴィス・ディン・オリオン閣下)を指差して、
「なんっ、なっ、なんでそっ!
それ先に言わないかなあ!?
聞いてない! 聞いてないし!」
「ああ、うん。言ってなかったよな?
今思い出した」
さらりと答えるスパイ(兼盟主)。
彼は淀みなく嘘をつく男である。
その、さらりと飛び出た嘘に、ミリアは瞬時にこくこく頷いて