3-10「目を覚ましてこっとぉぉぉぉぉぉぉぉん!ううっ!こっとぉぉぉぉぉぉぉんっ」(6P)
ゆっくりと、落ち着いたその声は、ミリアの動きをぴたりと止めた。
ハニーブラウンの視線が注がれる中、エリックは彼女に問いかける。
「…………この前、毛皮の話をしたのを覚えてる?」
「けがわっ?
えーとえーと
ちょっと待ってね、……思い出す〜」
言われて瞳を惑わせるミリアは、まだ少し混乱を引きずっているようだ。
ブラウンダークの髪の上。
前髪のつむじ辺りに手を置くと、
ぽん ぽん ぽん……
一拍 二拍 三拍。
リズムに合わせて彼女のまぶたの中。
はちみつ色の瞳が迷い、カタンと椅子に腰かけたと同時。
エリックは静かに息を吸い込んだ。
「……この前。
『毛皮が人気になったりするのか』って聞いただろ?
君は、俺に『そんなことはない』と教えてくれたんだ」
「──あ! 思い出した。
うん、そんなこと言ってたね?」
頷くミリアから 徐々に消えゆく混乱の色。
出来上がっていく『聞く』姿勢。
様子を見ながらエリックは、ゆっくりと頷き彼女と目を合わせた。
送る眼差しに『感謝の色』をのせて。
「…………ああ。
とても的確に教えてくれたから、助かったよ。
あそこまで教えてくれる人は、君ぐらいのものだったから」
「……そ、そう?
いや、あははっ、ちょっと照れるじゃんっ」
混乱は落ち着きへ。
落ち着きは はにかみへ。
流動的に動き、変化していくその感情。
照れるミリアを前にして
彼は、ゆっくりとカウンターに両腕を置き、
距離を取る。
適切な『距離』。
遠からず、近からず
それでいて『信頼』が伝わる距離。
「……?」
彼が作り出した『その間』に
ミリアが不思議そうに首を傾げた時。
エリックは”じっ……”と
黒く青い瞳でミリアを射抜き
「…………君に、話したいことがあるんだけど。
……聞いてくれる?」
「…………なに?」
「……これは
君だから話せることなんだけど。
……実は……
…………ウチのボスが困ってるんだ」
「…………ボス?」
「────ああ。
この領地の最高責任者。
盟主・エルヴィス・ディン・オリオン様だよ」
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「はっ?」
#エルミリ