3-10「目を覚ましてこっとぉぉぉぉぉぉぉぉん!ううっ!こっとぉぉぉぉぉぉぉんっ」(4P)
視界いっぱい
映し出された
彼女の焦りと、混乱の色
「……黙ってないで相槌とか打ってよ、せめてっ!」
「…………っ」
声から、表情から、滲み出る。
いつもの「飄々な彼女」はそこにいない。
エリックが彼女の気迫に慄いたわずかな一瞬に、ミリアはそのハニーブラウンの瞳を合わせて、
ぐっ…………! っと間をとり、
「…………困る!」
「………………わかってる」
「なんで、どうしてこうなったのっ!」
「…………………………、………………だから」
「あーもー、あーもー、ありえない!
どうしよう……!
いや、わかってる、お兄さんに言っても仕方ない、それはわかってる!
こんなの言ってもキミも困るよねっ!?」
「……あの、ミ」
「────っていうかわたし、どうやって帰ってきた?? ねえ、わたしちゃんと歩けてた? 記憶があるようで、無いよ!?」
「……大丈夫だよ、ミリア。
だからここにいるんだろ?」
「コットンとシルク!
無理無理無理無理、だって納期あるのに……!
いや! なんとかするけど、このまま布高いのマジでやばい……!
今はいいよ、いまは!
でもその内どうしようもなくなるじゃん!
ハッ! 代わりのもの探す? 探したらいい?
いやいやいやいや綿の代わりなんて無いよおおお!」
「……………………」
────もはや会話が成り立たない。
頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる彼女の口から出てくる言葉は、支離滅裂だ。
そんな彼女を前に、彼は
言葉に、迷っていた。