3-10「目を覚ましてこっとぉぉぉぉぉぉぉぉん!ううっ!こっとぉぉぉぉぉぉぉんっ」(3P)
やかましいミリアをほったらかしに、
一点を見つめて考えるのはエリックは、表情を鋭く砥ぎながら眉を寄せる。
(……この問題。
今のうちに原因を突き止めて潰すことができれば
服飾業界の大きな混乱も、民の暮らしも守ることができるよな。
まさか綿やシルクまで上がるなんて。
ギルド内で見つけられていたかどうか。
…………気づけたとしても、だいぶ後手に回っていたかもしれない。
問屋の店主の様子だと跳ね上がったみたいだし、早急に見つけられたと考えていいだろう。今後は、綿とシルクの高騰も含めて、広い視野とありとあらゆる可能性を加味しつつ動いた方が良さそうだ)
「…………ううっ、こっとん……!
こっとぉおおん……!
目を覚ましてぇ、安くなってェェェェェ……!」
(────ああ……
俺の人選は間違っていなかった。
あの時、靴を投げられたのは驚いたけど。
結果として情報源をいち早く確保できたのだから、”災い転じて福と成す”かな。
で、問題は『縫製組合をどこから切り崩すか』なんだが……
……やっぱり、縫製組合全体の雰囲気は……、
男の俺にはキツいな。
屋敷に来るお抱えのテーラーとはわけが違う。
あれじゃあ、情報どころか警戒されるだけだ)
「こっとん、あのね? きいてコットン。
これから冬になるのよ、あなたたちがどれだけ活躍すると思ってるの?
だいかつやくの時期に……
…………って、ちょっと待てよ、いや値段どうしよう値段、ええええ、うううんんん
えええええええ考えれば考えるほどっ
胃が痛ーい、胃が痛あああああいっ
えええええ、オーナーに言いにくいなああっ」
(…………やはり、
彼女を情報源とするのが一番手っ取り早いだろう。
ミリアの中で俺はもう『その他一般』では無いはずだし。
……しかし問題はアプローチ方法だ。どうやら彼女にはデートアプローチは効かないようだし、かと言ってこのままズルズルとここにいても、怪しまれるだけだ。
……そうだな……なんとか彼女に上手く・かつ怪しまれずに近づくアプローチを)
「──────ねえ!」
「!」
彼の思考を遮って。
ガシッと掴まれた腕と声に、エリックは驚き目を上げた。
弾かれた様に上げた先、飛び込んできたその顔に────息を呑んだ。