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第六章 サイラスの怒り(2)

話が動きます。

サイラス編が終わったら、女神サリア編突入ですかね?

長らくお待たせしてすみませんでした。




 あれから俺は自分なりによく考えた。


 まずオーギュを兄貴から守るためには、どうすればいいか。


 第二に兄貴の最大の弱点はなにか?


 これはすぐに答えが出た。


 兄貴の最大の弱点は俺だ。


 そして女神サリアの最大の弱点もまた俺。


 生き残る道として、女として生きると言う道を残している。


 それが何よりの証拠なんだ。


 これらを繋げると天敵とも言えるふたりの、最大の弱点は、どちらも俺なんだ。


 どうすればいい?


 どうすれば、兄貴から

オーギュストを守れる?


 女神の呪いから解放される方法は?


 女になるしか道は無いのか?


 そして俺はこれから先どうやって生きていきたいんだ?


 女神の神殿への道が開けたって、オーギュストが巻き込まれたら何にもならない。


 俺は誰かを巻き込んでまで生きていきたいとは思わない。


 なら、賭ける?


 三年後が今になるだけなら、生き延びられる可能性に賭けてみたい。


 今まで全部ランドルフに頼ってたけど、俺だって当事者なんだ。


 自分から動かないとダメだよな。


「この賭けに成功したら答えるから、だから、ダメだったときも、傍にいてくれよな」


 囁けない名を胸に俺は執務室を目指したのだった。





 執務室の扉を数度ノックすれば、部屋の中から父さんの声が聞こえてきた。


「入れ」


 黙って部屋に入れば、兄貴の他にオーギュストもいる。


 兄貴はイヤラシイ目付きで俺をみていて、オーギュストは気掛かりそうに俺をみている。


 それだけでふたりの気持ちの違いがわかる。


 だから、俺は一歩も引けなかった。


 もう嫌なことから逃げだすだけの偽りのポジティブ思考なんていらない!


 自分の未来は自分で切り開くんだ!


 兄貴との決着は俺がつける!


 今の兄貴が玉座に相応しいとは、俺には思えないから。


「珍しいな、シリル。この時刻にそなたが、ここに来るなんて」


 父さんも兄貴の出方を気にしてるみたいだ。


「今日は兄貴からの求婚について、正式に答えたくてきたんだ」


「おお。ようやく答える気になったか」


 喜んだ声を出す兄貴に俺は冷たい一瞥をくれてやる。


「言っておくけど受けに来たんじゃない。兄貴が相手だなんて、死んでもごめんだって断りに来たんだ」


「「シリル」」


 父さんとオーギュストが、心配そうに名前を呼んでくれる。


「何故だ? 父上からも認められているのに何故そんな心にもないことを言う?」


「悪いがサイラス。シリルとの結婚は、私も認めていない」


「何故ですか? 父上! 申し込んだ時は確かに!」


「あの時とは状況が変わったんだ。黒衣の宰相ランドルフの命により、そなたとの婚姻は認められなくなった。だから、諦めなさい。シリルのことは」


「伝説の宰相の遺言だとでも仰るおつもりですか。父上」


「そうだ。元々王家とランドルフ宰相の家系の婚姻は禁じられていた。私は知らずに妻に迎えてしまったが、ランドルフ宰相から、これ以上血が濃くならないために、シリルをそなたに嫁がせることだけは許さないと命じられたのだ」


「私の気持ちはどうなるのですか! 幼い頃から一途にシリルを愛してきたのに!」


「愛していたらなにをしても許されるのか? 兄貴? いや。サイラス?」


「シリル?」


「俺は再会するまでのサイラスは、尊敬できる兄貴だと思ってた。いや。再会してからも弟を溺愛する困った兄貴くらいには思ってたんだ。あの日までは」


 サイラスの拳がブルブルと震えてる。


 今のやつには、何をするかわからない怖さがある。


 体が震えそうになるのを堪えて、俺はその言葉をぶつけた。


「あの日のサイラスは、俺の気持ちも考えないただの野獣だった! 家族だと思ってた相手から、突然襲われた俺の怖さがお前にわかるのか! サイラス!」


「私を拒絶するのか、シリル」


「無理強いする相手と結婚したい相手なんていないんだよ! いい加減気付きやがれ! 今のサイラスは玉座に相応しいとも思えない! 人の気持ちも顧みないただの変態で独裁者だ!」


 俺のことだって、ただの所有物としか持っていないくせに。


 その言葉だけは最後の

情けで言わなかった。


 その言葉はサイラスの最後の理性を壊すものだと思ったから。


 サイラスは今にも俺に襲いかかりそうだったが、父さんが俺の言葉に同意してくれた。

 

「確かに私も最近のサイラスを見ていて、継承権の剥奪も考えていた。シリルに王位が継げるかは、まだわからないが、最悪の時はオーギュストを後継者に指名するつもりだった」


「父上まで! 私のなにがいけないとっ!」


「そのシリルへの過ぎる執着だ。ひとつのことに執着する王は独裁者にしかならない。今のそなたには王たる資質がないのだ。それでは国を委ねることはできない」


「聞いてくれ、サイラス。お前がシリルを独占したがっていたのはわかる。だが、何故その意思を尊重してやらない?」


「「「オーギュスト」」」


「シリルの自由をどうして認めてやらない? おれもシリルを愛している。だが、おれはシリル・ノワールを愛したのであって、シリルが男でも女でもどっちでもいいんだ。選ぶのはシリルだ。シリルの一生の問題なんだから! どうしてそれをわかってやらない! それどころか女になることを強要しようとする!」


「オーギュスト。すべての元凶はお前だな。私から王位を奪いシリルまで奪おうというのか?」


「違う! お前の間違いを指摘しているだけで、おれにはそんなつもりは」


「黙れ! 私からシリルを奪うものは、誰であろうと許さん!」


 サイラスが長剣の鞘に手をかけ抜き放つ。


「衛兵! サイラスが錯乱した! 衛兵!」


 父さんが護衛を呼ぶけど間に合わない!


 俺はとっさにオーギュストを庇って、サイラスとの間に割り込んだ。




 どうでしたか?


 面白かったでしょうか?


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