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赤の魔法使い  作者: Oz
7/8

後2 むかしがたり編

中3のおはなしからへたくそになってるかも。

久し振りに書いたもんで。

 「ペツォ!こっちにおいでよ。」



 俺を呼ぶ、その涼しげな声。


 俺と同じ銀の瞳と赤の髪。


 俺も紅い髪を揺らしてそちらに向かう。


 「すきだよ、だいすきだよ。」


 そう言いながら、その小さな肩を抱きしめる。


 「もう放さないよ、アリー。」


 俺の屋敷の庭での、ある平和な午後。

 だったらどんなに良かっただろう。




 俺は、赤の魔法の家の人間に拾われて貴族として育てられた平民だ。物心ついた時にはもう貴族の家にいて、自分が実子ではないと知ったのもそこでの出来事。それを教えられた当時は多少の衝撃を覚えたが、貴族とはそういう風に新しい才能を血に混ぜるのだということも、俺が皆よりも必要以上に努力しなければいけないことも、どうやっても才能が開花しない俺はただのお荷物なのだということも、次第に理解していった。


 多分、彼女に会った当時の俺はもう期待されていなかった。赤と無属性の色彩を持ちながらも魔力操作さえ覚束ない俺は穀潰しで恥曝しなのだと使用人にまで言われていた。我ながらひどい言われようだな。それなら捨ててくれて構わないとも思っていたが、貴族だったおかげで彼女を手にすることが出来たからそれはよしとしよう。


 誰にも顧みられなかった俺は、赤の魔法の家の領地にある寂れた村へ逃げた。貴族にとってそこに行くのは到底考えられないことだから、それほどその地域は荒れているから。このままここに隠れていれば皆俺のことなど忘れてくれると思った。勿論事はそう簡単に行かないことを今は理解している。


 だけど、その荒廃した村で、俺は輝く彼女を見つけた。いや、彼女に見つかって、その陽だまりに囚われた。

 俺と同じ色彩の、俺と同じ年なのに俺より小さな女の子。

 アリー。


 本当の彼女の名前は違ったけど忘れた。だってそれは大事なことじゃないから。俺が付けた「アリー」という名前こそが俺にとっても彼女にとっても一番大事だから。



 その後俺は貴族としての権力を使って彼女を俺のモノにした。彼女自身が俺の傍にいたいと望んでくれたこともそれを助長させた。屋敷の者を納得させるのは簡単だった。何故か彼女が俺の傍にいるだけで俺の魔力は滑らかに流れ、俺の意図に沿うようになったからだ。それが公になってからは屋敷の者は俺に魔法の教育を受けさせ彼女は俺の傍にいる者としての教育を受けた。


 彼女は全く違う環境になっても自由さを失わなかった。それに嫉妬する窮屈な者たちもたくさんいた。ただそんなものたちに出会う頃には、俺たちはそれを笑って見ていても安全なほどその地位を確立していた。




 そう、安全だと周囲の環境を過信していた。



 今から思えば彼女のことを公にすべきではなかった。俺の魔法の教育も秘密裏に行うべきだったんだ。



 彼女は、あまりに分かりやす過ぎる弱点だから。


 それを理解したのは失った後。




 「ペツォ!こっちにおいでよ。」



 俺を呼ぶ、その涼しげな声。


 俺と同じ銀の瞳と赤の髪。


 俺も紅い髪を揺らしてそちらに向かう。


 「すきだよ、だいすきだよ。」


 そう言いながら、その小さな肩を抱きしめたかった。でも、できなかった。彼女は半身が消し炭になって地面に転がっていたから。


 一瞬、世界が停まった。次に世界が動き出すとき、アリーの目からは光彩が欠け、俺からは人の言語が失われた。

 多分、アリーに魔法を放ったのはどこかの家の刺客だったのだろう。証拠としてせめて原型は残した死体があればよかったんだろうが、あいにく興奮していたもので。







 そして、俺は貴族であることを止めて、隣国に逃げてきた。名もない通りに住んで、名もない研究所で仕事をして、何も特筆することのない人生を歩みたいと思っていた。

 でも。

 今の人生も悪くないと思う。アリーによく似た彼女に出会えたから。

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