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この世界にはバグが多すぎる!

作者: 麦村

 

 ある日、私は親から部屋の惨状を隠すためにクローゼットの中へ無理やり物を詰め込んだ。

 その瞬間——世界が止まった。

 ほんの1秒ほどだったが、それで私はとあることに思い至った。


 あ、これあのゲームの世界だ。


 あのゲーム。

 そう呼んでいるのもなんだかんだでゲームの名前を覚えていないからだ。

 アクションゲームで恋愛な感じのジャンルだったのは覚えている。

 兎にも角にもバグの多いゲームだった。

 部屋の角に向かって前転しまくればいつの間にか浮き始めついには壁を超えた黒い床に着地し、人に話しかけたと同時に部屋を出ればテキストが表示されたまま移動ができる。

 私がそのゲームを知ったのも、それらのバグを乱用してとにかく早くゲームをクリアする動画を見たからだ。

 ちょうど近くのゲーム屋で安く売ってたので買って、動画で見たバグを再現して遊んでいた。

 ということで内容は最初と最後ぐらいしか覚えていない。あと道順。

 アクションの方が目的だったので、ノベルパートの方は1週目ぐらいしか見ていないのだ。


 起こったバグにも心当たりがある。

 バグというよりもおそらくは処理落ちだが、それは置いておこう。

 ゲーム的にはクローゼットはストレージ……持ち物欄、というか倉庫なのだ。

 ついでになぜかどこのクローゼットだろうがロッカーだろうが同じ倉庫から引き出せる。

 それはゲーム的な仕様だろうから置いておく。

 今回起こったのは倉庫へ物を一度に大量に収納すると画面が固まる、というものだろう。

 動画でこれが起こるとロスなので回避していきますとか言ってた。


 まあ、そういう経緯で私はこの世界がなぜかバグまで実装していることを知ったのだ。

 クローゼットが空いたせいで親にはこっぴどく叱られたが。




 その日、私は近くの教会の近くに来ていた。

 なんかゲーム的に重要なキャラがいたような気もする。

 でももらえるアイテムそんなに強くないから覚えてない。

 まあ、とにかく私は教会の近くに来ていたのだ。

 手にはその辺で拾ったいくつもの石を握りしめて。

 教会横の路地にはタルが置いてある。

 このタルと教会の間に入り込んで教会の側へアイテムを投げると、なぜか投げたアイテムが減らずに新しいアイテムが手に入る。

 タルの近くで投げるのはタルへ座る動作と同時に投げることで投げなかったことにすると同時に投げたアイテムを回収するという現実的には無理そうなことのためである。

 これだけでもアイテムを無限に増殖させられるのだが、教会バグと合わせることで凶悪なものとなる。

 この街の教会のこの教会だけはアイテムを投げると全くの別物になって戻ってくるのだ。

 教会周りには精霊とかいうのがいるらしく、それがアイテムに変化してるんじゃないかとかなんとか。

 なんでもこの教会の周りにはミスか大量に見えない精霊がいるらしい。

 未実装イベントの名残とか言われてる。

 密かに制作側の手抜きじゃないかと思ってるが。

 まあいいや。目に見えず、声も聞こえず、触れもしない……とにかく五感で感じ取れないなら無いも同然なのでさっさと石に変化してもらう。

 なるのは石じゃないけど。


 石を投げると同時にタルへ座ること数十回。

 ついに目標個数にたどり着いた。

 その辺に落っこちた元石……銀の短剣を拾い上げる。

 攻撃力も防御力も貧弱なアイテムだが、これにも使い道がある。

 換金用アイテムとして優秀なのだ。

 その辺の石から変化させることができるし、この街に換金に最適な場所があるというまさに序盤の金策にぴったりなアイテム。

 ということで換金へと向かう。


「こ、これは……銀の短剣!? しかもこんなに!? ほ、本当にもらっていいんだね? お嬢ちゃん」

「うん。それはいいから金とブーツをよこせ」

「わかったわかった。これなら……」

「6000G」

「そうだった! それと韋駄天のブーツをあげよう」

「ありがとう。もう用はない」


 町外れに住んでいる貴金属マニアの元へ向かい、換金。

 ついでに累計で30個アイテムを渡すともらえる韋駄天のブーツを手に入れた。

 早速ブーツを履く。

 ……だいぶ早くなった気がする。

 このアイテムも制作側の手抜きなのか、ステータス的なスピードと同時になぜか全てのモーションの再生速度が上がる。

 これで次の増殖変化バグのスピードが上がる。




 その辺で拾った石から変化した銀の短剣を今度は教会の中へ向かって投げつける。

 なぜか遠距離攻撃は魔法以外は素早さが威力になるようになっている。

 ……なんで教会の中に向かって投げてるのか?

 それはここにボスがいるからである。

 やっぱり手抜きなのか、ボスはいないのではなく、見えないだけで存在自体はしている。

 なんか人型だった気がするが、大抵の場合イベント戦闘扱いになる教会内ではなく外からチクチクと攻撃して倒すので姿形は全く見えない。

 特定の条件を満たすと教会内で戦えるタイプの敵だからしょうがない。

 多分教会内だと武器を出せないから透明にしただけなんだと思う。

 そんなわけで石よりはマシだが攻撃力の低い短剣をひたすら謎の壁に向かって投げつける。

 なんだっけ。悪魔とかだったっけ?

 銀の武器には一応邪悪特効があるからこの短剣でも攻撃力を1.5倍にしてくれる能力がある。

 そういう理由でブーツ履いて教会の外から中へ銀の短剣を投げつけていれば倒せる敵なのだ。


 20本も投げれば暇になってくる。

 なんで今、こういうことをしているのか。

 それは単純に世界を救うため、である。

 邪神(ラスボス)が目覚めると問答無用ですぐに世界が滅びるからしょうがない。

 それだけは結構はっきりと覚えていた。

 私、まだ死にたかないし。

 あとこれがゲームならクリアしなければ意味がない、とも思っているからだ。別に私主人公でもないけれど。

 ……短剣をほとんど投げ終わって教会内にアイテムが落っこちたのがわかった。

 ボスも倒して悪魔の心臓を回収。

 これがまたなかなか優秀なアイテムなのだ。

 魔法が一切使えなくなる代わりに攻撃の威力が2倍になる。

 ここでアクセサリ欄に装備していく。

 悪魔の心臓とか言ってるけどこれペンダントだし。


 教会の外へ出て女神像へ向けて銀の短剣を投げつける。

 もうこのアイテムに用はない。

 ……よっしゃヘッドショット。

 今日は運がいい。




「神をも恐れぬ愚か者めが! その裁きを受けるがいい!!」




 ……あれー?

 気がつけば僧兵に拘束されて牢屋へ連行されていた。

 ゲームだとこんなのなかったんだけどなあ。

 しょうがないので壁抜けバグを使う。

 個室なら大体どこでもできるバグである。

 まあ天井乗りバグでもいいんだけど。

 牢屋の壁へ向かって走り、ジャンプからの飛び蹴り。

 これで私の体は牢屋の壁へと沈み込む。

 ……よく考えたらこれおかしいのでは?

 まあいいや使えてるし。

 地表を見上げればなんとなく今どこにいるのかがわかる。

 せっかくだし王城の真下まで行って宝剣回収しておこう。




 着きました王城の真下。

 ここでなんとなく昔を思い出す。

 すると体が浮上し、宝剣の封印された空間へ到着。

 主人公のコマンドとして過去回想を使うとシーンが切り替わるとかなんか色々あって地中にいる場合は浮上できるのだ。

 早速宝剣を台座から抜いて装備する。

 儀式用の剣だとかで攻撃力がそんなに高いわけではないが、それでも短剣よりは断然強い。

 このまま部屋を出ると侵入者だとかなんだとかでタイムロスなのでさっきと同じように壁抜けで脱出。




 とりあえず森近くの門で浮上。

 適当に木の棒(剣)を拾って宝剣との二刀流。

 この状態で剣を振り続ける。

 ……ちなみに木の棒は短剣よりも攻撃力は低い。

 二刀流素振りタイム、である。


「その剣筋……見事なものだ」


 来た。

 謎のジジイイベントである。

 ある程度の攻撃力がある状態で剣で素振りしてるとランダムで起こる。

 短剣は剣ではなく短剣のカテゴリに入るので無効。


「お主のようなものに託したほうがいいのだろうな……」

「いいと思うよ」

「そうか。……儂のような老骨に扱える武器ではない、ということか」

「うん」

「……この力、正しく使ってくれ」

「なるべくそうする」


 ということで準最強武器、英雄の剣を入手。

 人によってはこれが最終武器になることもある。

 さて、これで準備も済んだし、早速邪神を倒しに行くぞー。




 フィールドでは壁抜けが使えない。

 まあしょうがないので前転をとにかく繰り返して移動する。

 これがこのゲームで一番早い移動方法なのである。

 ごろごろと森を抜ける直前でボス、アルラウネ。

 英雄の剣一振りで退治してアイテムを入手して前転を続ける。

 ドロップした復活アイテムを保険として回収。


 森を抜ければ新しい町があるが、それも無視してごろごろと進んで行く。

 今度は山である。

 道なりに転がっていけばそこには落ちた橋が。

 直すのはタイムロスなので見えない壁に向かって何度も前転して上昇することで見えない壁の上に立つ。

 ここから前転することで飛距離を普通に飛び降りるよりも伸ばすことができる。

 通称フライング前転。


 空中でぐるぐると回ってもうすぐ橋の片割れをつかめるというところで微妙に手が届かない。

 あっ、宝剣入手までの手順が端折られたせいで毒の刃(短剣)持ってないの忘れてた。

 しょうがないので木の棒折って短い木の棒(短剣)にして装備。

 宙を切り裂いて飛距離を伸ばして橋を掴む。

 短剣の技の中には飛びながら使うことで僅かに前進できる技があるのだ。

 これはバグではなく仕様。多分。

 ハシゴのようにして橋を登りきり、対岸へたどり着く。

 本当は頂上行ったり橋直す関係のイベントもあるのだがスキップである。

 ……もう昼過ぎか。


 山を下って洞窟に入る。

 暗いので本来はカンテラが必要だが、道は暗記しているので問題なし。

 カンテラを持っていることがフラグの一つだとかで、地底湖でのボス戦も無く無事洞窟を潜り抜けられた。


 洞窟の次の分かれ道を左に行くとまた森である。

 しかし今度は迷いの森。

 決まった進み方をしなければ入り口に戻されてしまうのである。

 これも他のマップと同じように覚えているので、ヒントを聞くためだけにわざわざエルフの村へいく必要もなし。

 ごろごろと転がって森の祭壇へ到着。

 祭壇で世界樹の杖を入手。

 これはイベント用アイテムなので装備はできない。

 どこかに仕舞って持っていない状態にはできるが。

 これで各地に世界樹の苗を植えることでワープができる。


 迷いの森から引き返して分かれ道を逆に進む。

 ようやく他の街にたどり着く。

 ……そろそろ夕方になりそう。

 適当に世界樹の杖を振って苗木を生やす。

 これでいつでもここにワープできる。

 ここはただの中間地点なので無視して転がっていく。


 平穏な道を転がって港町にたどり着く。

 ここから海を渡った島がラストダンジョンだ。

 その辺の武器屋へ入って話しかけると同時に武器屋を出る。


「何か買っていくか?」


 現実で考えるとどうなってるのかいまいちわからないが、あれだ。

 なんかビデオ通話してるような気分である。

 向こうの表情がいつでも見られる。あんまり嬉しくない。

 とにかくこれでいつでも武器屋が使える。

 これが出張武器屋だ。

 本来、ここから四大精霊の下を尋ねるとかあるが、スキップ。

 船着場のあたりの路地に鉤縄が放置されているので回収。

 島に着いてから使うことになる。


 四大精霊の力を使って島までの橋を作るとか世界樹の杖を成長させるとかあるが、わざわざ各地を回るのはどう考えても無駄なので普通に海を渡ることにする。

 このゲーム。海の上も歩けるのである。

 しかし、普通の方法では海の上にはいけない。

 ということで船着場の適当な船のタラップの上を走っていい感じにずっこける。

 これでなんかよくわからないがタラップから落ちて海を歩くことができる。

 ここからは海上を転がって邪神が封印された島へと移動する。


 もう日が沈んできた。

 島には禍々しい神殿が建っている。

 ど真ん中に棺桶が置かれているので蓋をその辺に投げ捨てて棺桶の中へと飛び込み、数mを上手いこと落っこちる。

 このゲームに落下ダメージは無いので問題なし。

 ここでようやくレベリングを始める。

 ということで英雄の剣に持ち替えて、と。

 この武器の特殊効果として、攻撃を連続で当てた回数に応じて威力が上がる、というものがある。

 最大100回で+100%。つまり2倍。

 ついでにこの辺の奴らに対しても特効持ってるのでさらに1.5倍。

 さらにに悪魔の心臓の効果で2倍。

 乗算なので常時攻撃力6倍である。

 二刀流だと両方の攻撃力が加算されるので宝剣と英雄の剣を両手に持つ。

 これで2、3回ほど攻撃するだけで雑魚は倒せる。

 こういうところが割とガバガバなゲームなのだ。




 転がりながら攻撃を重ねてついに所持金15000G超え。

 レベルは大体22ぐらい。

 ごろごろ転がってボスの扉近くまで来てから出張武器屋で武器を買う。

 武器と言うより防具だが、このゲームだと防具も武器屋で買えるのでなんの問題もなし。

 捨て身の鉢金を購入。防御力が半減する代わりに攻撃力2倍。

 現在驚きの攻撃力12倍である。ちなみにステータスアップに上限はない。


「また来いよ」


 おっと幻聴。

 どうやってか手元に現れた鉢金を装備。

 近くに設置されている紫色の炎の松明を切り刻んで真・攻撃アップポーションを入手。これは一定時間攻撃3倍。

 36倍。並大抵のゲームではあり得ないレベル。

 ついでにレベルが上がったことでデバフで防御ダウンもできるようになったのでダメージ自体はもっと上がる。


 準備も終わったのでボス部屋突入。

 やけに天井が遠い部屋の中央まで行って過去を思い出す。

 あー、インスタントシチュー美味かったなー。

 さて、思い出の中でシチューを食べ終わって現実に戻ってくればそこにはストップモーションがごとく微塵たりとも動かない邪神(第一形態)の姿が。

 細長い黒い蛇の姿をしていて、普通に戦う場合は部屋中飛び回るのだが、過去回想をボス登場ムービーの直前に見ることで棒立ちにできるのだ。

 これはボス戦の基本テクニック。アルラウネは使わない方が早いから使わなかったけど。

 まず覚えたばかりの新スキル、シールドブレイクで防御ダウンしてから二刀流でぶん殴る。

 魔法ではなく物理系のスキルなので、悪魔の心臓を装備していても使用可能。

 弱点とかそういうシステムは実装されていないので本当に適当に殴るだけである。

 数十回も殴れば第一形態が終わる。

 細長い蛇からのたうち回ったり首が増えたり足が増えたりして、天井の方へ去っていった。

 これからちょっとギミック攻略してからの第二形態&最終ボス戦である。

 ボスが壁にぶつかった反動でブランコ的なものがいくつも落っこちてきているので、それに向かって鉤縄を引っ掛ける。

 ここからはひたすら縄を登るだけである。

 通常プレイではここで滑空できるアイテムが手に入っているはずなのでそれも使うのだが、そんなものはないので短い木の枝で代用。


 なんか上方面にぶっ飛べるバグ技ここで使えるのないかなあ、と考えつつどうにか上へ到着。

 決戦をするマップはこことは続いていないマップなので、壁抜けは使えないのだ。

 上に到着してからもなんやかんやあるが、最後の扉の直前に鉤縄使える場所があるので引っ掛けてショートカット。

 よし、最終マップについたぞ!!


 最後の最後に待ち受けるのは白い神殿的な円形のステージに佇むなんかでかいドラゴンである。

 ラスボスの邪神の第二形態でもある。

 なんかでかいが、マップ入ってちょっと歩く前に回想しとけば棒立ちになるので何も問題はなし。

 ここで真・攻撃アップポーションを飲む。

 あーちょうどのど乾いてたんだよねー。

 飲み終わったのでここからは攻撃力3倍……合計36倍である。

 初手にシールドブレイクで防御下げてからの棒立ちになったドラゴンの後ろ足と胴体の間に入り込む。

 実は、このゲームの大型ボスには当たり判定が複数用意されているとかなんとかで、上手く位置を調整すれば、一回の攻撃で複数回のダメージを与えることができるのだ。

 今回は胴体と足それぞれに合わせて五つある。それで二刀流でダメージを与えやすいのが後ろ足と胴体の間、と言うことである。


 回ったり、剣を振り回したりなるべく両方とも当たるようにして多分32回。なんとなくボスを倒せた、という感覚があった。

 実際それは正解だった。

 目の前のドラゴンが縮み始め、人型の影のようになる。

 これが最終形態のプレイヤーの影である。

 ゲームにはよくあるように、主人公のステータスがそのままコピーされる敵である。

 武器は反映しないので楽勝としか言いようがない。

 カウンターが一番早いので待っているのだが……。


 ……。


 ……。


 ……足遅くない?


 しょうがないので近寄って英雄の剣を一振り。

 プレイヤーの影は散った。

 これでクリア。

 主人公に特別な力があったとかそういう設定があった気がするし、多分まだ旅に出てすらいない本来の主人公の力をコピーしたのだろう。

 まあゲーム的にはクリアしたけども、邪神がどうとか封印するとかそういうのはまだ解決してないので、足元に空いている溝に世界樹の杖を突き立てる。

 これで四大精霊と主人公が降臨の儀式かなんかして女神的なのが降臨して大体全部解決した気がする。

 特に契約もしていない四大精霊が呼び出されて、ぐるぐると杖の周りを回り出す。

 すると、杖から謎の女神的な存在が現れた。

 女神像と同じ造形してるし多分女神。


『あなたが……今代の勇者?』

「いいえ違います」

『……いえ、あなたは勇者でしょう。なんの力もないというのに邪神を倒したのですから』

「じゃあ勇者です」

『……おそらく、何も知らないのでしょうが、それでもあなたは世界を救った。それはきっといつまでも、いつまでも語り継がれることでしょう』

「大げさな」

『それでなくても、私相手に友人と変わらないような振る舞いをするのです。私がそれを広めることでしょう』

「それよりも早く邪神の亡骸壊して」

『まあこれはちょっとした戯れですよ。これで——』


 女神の指パッチン。

 謎の白い波動が指から広がっていった。

 多分神聖なオーラだ。こういうのにはよくある。


『——邪神は永遠に現れることはないでしょう』

「じゃ、帰るんで」

『きっといつかまた会えるでしょう。真の勇者よ』

「勇者じゃない」

『……? ならば、一体?』


 なんと言うべきか。

 ……そうだ。


「ただの……超カッコいい転がり屋ってことで」




 ちなみに、このゲームにも称号はある。

 普通の、カッコいい、すごいカッコいい、超カッコいい、と4段階あり、とにかく転がっているともらえる称号が転がり屋。

 そう、つまりはこれまでの冒険で私は超カッコいい転がり屋になったのだ!


『そうですか、ならば私もそれを目指してみましょうか』

「ここからウチまで転がり続ければ、すごいカッコいい転がり屋にはなれる」

『コツは教えてもらえますか?』

「簡単。初級テクニックどころか操作方法レベル」


 そうして、なぜかついてきた女神とともに転がって帰ったはいいものの、一日中家を開けていたせいで私はこっぴどく叱られたのだった。




 

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